アカデミー賞に輝かなかった作品 その1〜「Mank/マンク」を観る
アカデミー賞の発表があり、最優秀作品賞は本命とされた「ノマドランド」が獲得した。この作品と、ユ・ヨジョンが助演女優賞を獲得した「ミナリ」については、映画館で観て、4月7日と3月31日のブログに書いた。
この2作以外の、作品賞ノミネーション作だが、「プロミシング・ヤング・ウーマン」、「ファーザー」、「Judas and the Black Messiah」は日本未公開。残り3作は配信で観ることができる。3作の内、気になっていた「Mank/マンク」を 26日の発表前にNetflixで観た。
“マンク”とは、映画史上に輝く名作「市民ケーン」(1941年)の脚本を、オーソン・ウェルズと共に執筆しアカデミー脚本賞を獲得した、ハーマン・マンキウィッツのこと。「市民ケーン」は今年最初に観た映画として、1月10日のブログで書いた。
この映画は、この“マンク”が「市民ケーン」の脚本を書き上げるまでのドラマを、過去の出来事をフラッシュバックさせながら描いていく。過去とは、ハリウッドと政治、そしてメディアとの関係であり、登場するのは映画会社MGMの総帥ルイス・メイヤー、彼を支えた天才でアカデミーの特別賞にその名を残すアービン・サルバーグ。新聞王で「市民ケーン」のモデルになった、ウィリアム・ハーストら。
映画は、“マンク”の人間臭さを写しながら、背後にある米社会における“公正さ”や“正義”を問うている。ただ、私にはこの映画は「市民ケーン」を観ていることが前提になっているように思え、「Mank/マンク」が単体として、観客にどの程度訴えかけられるのか、ちょっと分からない。そんな印象もあり、アカデミー賞レースにおいては、「ノマドランド」にも「ミナリ」にも及ばないと思ったし、結果もやはりそうだった 。
ただし、白黒の画面で表現された1930年台のハリウッドを始めとする映像は美しく、フラッシュバックを活用した構成など“見せる”テクニックは素晴らしいものがあった。アカデミーの撮影賞と美術賞を獲得したのは、よく分かる。
観る価値はあるが、「市民ケーン」を観てから、あるいは復習してから観ることをお勧めする
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