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伊丹十三の映画が観られる‼︎(その6)〜「ミンボーの女」を考える

日本映画専門チャンネルの伊丹十三特集、3月の2本目は「ミンボーの女」(1992年)、3月25日放送予定である。“マルサ“、“あげまん“に続いて、伊丹十三は“ミンボー“という言葉を世に出す。

“ミンボー“とは、民事介入暴力のこと。民事紛争に介入し、不当な要求をする行為です。東京弁護士会のサイトでは、その例として、 <交通事故の加害者に対して、不当に高額な慰謝料を請求する>、<暴行や脅迫によって貸した金を取り立てる>と書かれている。

典型的な行為者は、暴力団のような反社会的勢力であり、映画の公開に先立つ1991年に通称暴対法/暴力団対策法が成立している。

主演は宮本信子、ミンボー専門の弁護士である。実際に暴力が振るわれたり、脅迫罪が成立すれば警察が乗り出してくれるが、そういった行為がなければ、“民事不介入“の原則で、警察は助けてはくれない。

名門ホテル、ロイヤルコートはその脇の甘さから、反社勢力に食い物にされている。ホテル側は、状況を正すべく立ち上がり、それを支援するのが宮本信子である。

「マルサの女」を踏襲するように、分かりやすい“悪“に対して立ち向かう、痛快エンタメ性たっぷりである。本作は大ヒットし、92年の邦画では「おろしや国酔夢譚」に次ぐ二番目の配給収入、15.5億円をあげる。 (「マルサの女」は12.5億円)

ホテル側は、会長の大滝秀治ははまり役として、なんとも頼りない総支配人の宝田明が良い。そして、現場で宮本信子と共に前線に出るのが大地康雄。さらにフロント・マネージャーに三谷昇!!

対する反社側には、伊東四郎、中尾彬、小松方正と、迫力満点である。伊丹映画は、キャスティングが素晴らしいが、こうして俳優名を並べただけで、映画の出来の良さが想像できる。

ただ、なんだろう。この映画を見ると、なにか違和感を感じる。面白い、よくできた映画でヒットしたのも分かるのだが、伊丹十三ならではの遊び心、マニアックな側面やこだわりといった、いわば“オシャレ“な要素が希薄のように思えるのだ。それは、実際の法律制定まで行われた、ガチの社会問題に向き合ったせいかもしれない。

なお、映画の公開直後、内容に不満を持った反社会勢力の団員数名が伊丹十三を襲うという、“オシャレ“からはほど遠い事件が起こる



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