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普通に面白いシーズン4〜ノア・ホーリーの「ファーゴ」

海外ドラマ・シリーズ「ファーゴ」は、私の中では未だベスト5の座を譲らないのだが、2020年配信のシリーズ4については見そびれていた。1〜3は確かNetflixで配信されていたと思うが、知らないうちにAmazon Primeに引っ越していたのだ。

「ファーゴ」のオリジナルは、1996年コーエン兄弟の監督・脚本による映画作品。アカデミー主演女優賞・脚本賞を獲得した作品である。

この映画に刺激された、プロデューサー/監督・脚本家のノア・ホーリーが、TVシリーズとして作り上げたのがノア・ホーリー版「ファーゴ」である。 コーエン兄弟は、エグゼキュティブ・プロデューサーとして、名を連ねている。ファーゴというのは、アメリカの地方都市名だが、あまり意味はない。ただ、映画も含め、アメリカのある街で起こる犯罪をベースにした、クライム・ストーリーである。

TV版「ファーゴ」も、強い支持を集め続け、シーズン4まで公開され5も作成中である。それぞれのシリーズ、映画版は独立した話であり、登場人物のかぶりはあるが、どこから見始めても問題はない。私もTVシリーズの1〜3を見た後、映画版を観た。

独立した話とは言え、その世界を漂う空気感が共通している。いずれも、ちょっと不気味なドラマであり、ドキッとする場面・設定も多く登場するが、それらが結構突き抜けているので、陰惨というよりも荒唐無稽な面白さが感じられる。

そのシリーズ4だが、全3作に比べると評価が落ちている。1はエミー賞受賞、2と3は候補作には上がった。しかし4はノミネートもされず。Rottenn Tomatoesの批評家による支持率は、1が97%、2が100%、3が93%。これに対し、シーズン4は84%。それでも十分高いが。

さて、私が観たシーズン4だが、普通に面白い。ミズーリ州カンザス・シティを舞台とした、イタリア人マフィアと、黒人ギャング団の抗争が軸になっている。第1・2話あたりは、物語の構造を理解するのに少し苦労したが、第3話から一気に加速され先を急ぎたくなる。

2つの勢力の周辺にいる、脱獄囚の二人の女性とその一人の姪子、何か危なそうな看護婦などが、ドラマの幹に絡みついていく。

ノア・ホーリーを中心とした脚本は、前シリーズと同様によく出来ていて、複数の視点からドラマを描きながら拡散した印象を残さず、緊張感が持続する展開になっている。「ファーゴ」シリーズの魅力は、かなり激しい犯罪を描きながら、“これは嘘だよ“という洒落っ気が見え隠れするところだが、シリーズ4の第9話はその白眉で、映画「オズの魔法使い」のオマージュにもなっている。

なお、主人公の一人、黒人団のボスを演じるのはクリス・ロック。アカデミー賞でウィル・スミスのビンタ事件を誘発した彼が、なかなか味のある演技を見せてくれる。

「ファーゴ」シリーズは、得体の知れない気持ち悪さを感じさせてくれる、クライム・ドラマだった。その意味では、このシーズン4の気持ち悪さは、相対的には薄い。逆に、王道のミステリー・ドラマとも言え、ノア・ホーリーの腕の確かさが改めて確認できる。

観るに値する、シーズン4です。

なお、ノア・ホーリーは「晩夏の墜落」という小説も出しており、アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞している。こちらも、なかなかの傑作である



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