見出し画像

“リアル“を追求した初期の大友克洋〜全集第2巻「BOOGIE WOOGIE WALTZ」

大友克洋のデビューは1973年だが、単行本化されたのは1974年の作品から。1974年から76年にかけて週刊漫画アクションに掲載された作品は、綺譚社から単行本「BOOGIE WOOGIE WALTZ」にまとめられ、1981年に発行された。

大友ブームが巻き起こった後であり、私は単行本を購入し読んだ。今回刊行された全集版第2巻は、綺譚社版をベースにしつつ、未発表作品を含め、時系列に再整理し編集されている。

この巻には15の短編マンガ、それぞれ20数ページが収録されている。1975年初の2作が入っておらず、1976年の初めに書かれた2篇が掲載されているので、15という数は大友が1974−75年に発表した作品数と一致する。

週刊誌への掲載だが、登場するのは月に1回あるかどうか。そのせいか、中に“傷だらけの天使”シリーズと名付けられた7篇がある。萩原健一と水谷豊が主演したTVドラマは1974年に放送開始され話題となった。大友のマンガはドラマとは全く関係ないように見えるし、シリーズと言っても独立した小品。読者に大友作品を認識してもらうための苦肉の策のように見える。

この頃の大友作品は徹底的にリアルである。それも、社会の底辺の現実、苦悩、刹那的な日々をえぐるように書いている。しかも、絵は大友のそれであり、映像/写真的な表現も多々登場、暗く救いようのない世界が次々と登場する。

後書きによると、映画、モノクロの日本映画、ATGのアート系作品、日活ロマンポルノなどに影響され、さらにジャズやイラストにも触発され、<物語がリアルな方向ならば、絵もリアルであるべきだと考えました>と書いている。

こうして<デフォルメされた絵>、<マンガ絵を捨てて>、大友克洋スタイルが確立していくのがこの時期である。また、編集部の理解もあり、<毎号色々な実験をしていました>。それが故に、<若気の至りが一番出ていた頃の作品で恥ずかしいです>。

知らなかったが、上述の綺譚社からの単行本は、16ミリ映画の制作費用捻出のために出版したもので、本来単行本にするようなものではないと、すぐに絶版にしたそうだ。おかげで、あの頃、初期の大友作品に触れることができたのである。

作者の意識も分かるが、この作品集に掲載されたものは、その後の大友飛躍につながる貴重なマンガ群であると共に、若さと野心とこだわりが込められた貴重なものである



この記事が参加している募集

#マンガ感想文

19,969件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?