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三人の“色気“がぶつかり合う〜萩原健一・倍賞美津子・高橋惠子による映画「恋文」

2003年にTBSで放送されたドラマ「恋文〜私たちが愛した男〜」、連城三紀彦の直木賞受賞作「恋文」の表題作を、岡田惠和脚本でドラマ化した作品である。

このドラマが大好きで、再放送しないかと思っていたら、数年前BSで放送されたので見直した。

出版社で働く竹原郷子と美術教師の将一夫婦、二人の間には息子が一人。ある日、将一はかつての恋人、田島江津子と再会するのだが、江津子は病に冒され余命半年だった。そして、将一は江津子に寄り添うべく、家を出るのだが、将一・江津子の関係の中に郷子も参加し、三人の関係は切ないものとなっていく。

将一を演じるのは渡部篤郎、ピッタリの役どころ。妻の郷子は、表面的には将一の行動を受け入れる女性を演じるのが水野美紀。そして江津子が和久井映見で、このドラマでの彼女は最高である。この話は、キャスティングと、役者の表現力がなければ、リアリティがない。将一には危なげな魅力が必要だし、江津子は美しく、可憐と野蛮が同居しなければならない。そして郷子は。。。。

「恋文」はドラマに先立ち、1985年に映画化されておりWOWOWで放送されたので観たのだが、その感想が本題である。

映画版のキャストは、郷子に倍賞美津子、将一に萩原健一、江津子に高橋惠子である。ドラマ版とは細かな部分で差異があるが、印象的に最も違うのは郷子である。ドラマ版では、渡部篤郎と和久井映見という“色気“の間に立ち冷静さを保とうとする江津子だったが、映画版は“色気“の三つ巴である。この三人を組み合わせれば当然と言え、またその“色気“の質がそれぞれに違っている。さらに、そこに小林薫が絶妙の絡みを見せる。

高橋惠子が美しい。私の好みではないとずっと思っていたのだが、こんなに美人だとは思わなかった。萩原健一の魅力、この役へのフィット感は完璧である。この二人を上回る存在感を示すのが倍賞美津子で、映画版は三人の“色気“の中で、竹原郷子に若干の重みを感じる。夫の身勝手な行動を許す郷子とはどういった女なのか。映画版では、そのことが大きなテーマになっている。

倍賞美津子は、この作品で日本アカデミー賞主演女優賞を受賞している。

監督は神代辰巳。日活ロマンポルノというプラットフォームの上で、「赫い紙の女」などの名作を作り上げた人である。 音楽がいいなぁと思っていたら、井上堯之だった。スパイダースの元メンバーで、PYGで萩原健一と共に活動、ショーケン主演の「傷だらけの天使」「前略おふくろ様」の音楽も手がけた。

今のところWOWOWでの再放送も予定されていないが、7月31日まではWOWOWオンデマンドで視聴できる。魅力あふれる三人の“色気“は見どころ満載である。DVD化はされていないので、放送を発見したら要録画である

ドラマ版はParaviでは配信されている模様。TBSの作品なので、BSで再放送の可能性はあるだろう


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