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講談の世界は深い〜四人の先生による第三回夢空間講談会

今年は講談をもう少し勉強しようと思っていたが、さほど高座に接することはできず、5月17日に第三回夢空間講談会(於;イイノホール)が、講談会としては今年初めてとなった。

開口一番の、一龍斎貞司「木村又蔵」に続いて、最初に上がったのは六代目神田伯山。演目は「五貫裁き」。大岡越前が登場する、“政談物“。落語の演目でもあり、立川談志は同名で、三遊亭圓生は「一文惜しみ」という演題で演じた。

したがって、聴衆も入りやすい世界、聴きやすい読み物であり、最初に登場するにはピッタリである。笑いも多く、エンディングは講談らしくまとめられ、客席を十分に温めてくれた。

続いては神田愛山。二代目神田山陽の弟子、つまり伯山の師匠、神田松鯉とは兄弟弟子の関係である。伯山はこの愛山の芸をリスペクトし、YouTubeの「伯山チャンネル」でも取り上げられているほか、「相伝の会」として愛山の芸を承継するというコンセプトで、二人会を催している。(なかなかチケットが取れず、行けていない)

私にとっては、初めて生で聴く愛山先生、演目は「天保水滸伝より ボロ忠売り出し」 である。この高座が素晴らしかった。まず、愛山の講談師としてのたたずまいが良い。少し危なさを感じさせる、芸人の色気が感じられる。演じたものも“侠客物“で、親分の着物とお金を拝借し、大博打を打つ“ボロ忠“が主人公。愛山の魅力が大いに発揮される。

“侠客物“といえば、いわゆるヤクザ者を主人公にしたもの。この「天保水滸伝」や「清水次郎長伝」が代表的なものであるが、今やこのテーマが残る芸能は少なくなった。ある種の日本人らしさを内包した世界は、残していきたいと思う。

中入り後は、女流講談師、田辺銀冶(ぎんや)蝶花楼桃花桂二葉など、女流落語家が話題になっているが、講談の世界は随分と前からジェンダー・フリーになっている。

銀冶の母も講談師の田辺鶴瑛、親子とも田辺一鶴に師事した。新作も多く演じるようだが、この日は古典「池田輝真 婿引出」。池田輝政は、羽柴秀吉の家臣。小牧山の戦いで、徳川方に父と兄が討たれる。恨み骨髄の輝政だが、秀吉は家康と和睦。秀吉と家康は、輝政と徳川方の関係を修復しようと腐心する。池田輝政は、後に姫路城主となり白鷺城と言われる姿に改修する。

“軍談“の後日談だが、銀冶は声・語りも端正で、講談のお手本のようだった。

トリで上がったのは、一龍斎貞心。最後を締めくくる、柔らかな語り口で、観客席を包み込むような語り口。「天明白浪伝より 八百蔵吉五郎」。“白浪“とは、盗賊・泥棒のこと。歌舞伎や講談の世界には、“白波物“というジャンルがあり、歌舞伎で代表的なのは弁天小僧が登場する「白浪五人男」である。

両国広小路の茶店に通ってくる、呉服屋の若旦那。茶店で働く女性と若旦那は、いい仲になって行くのだが。。。。

ちょっと人情噺的な読み物で、講談会は締めくくられた。

客性は、伯山ファンというよりも、講談ファンで埋められた印象で、とても良い空気感だった。それぞれに個性のある演者、講釈ネタの幅広さを体感できた会で、ありがたかった。

もっと、講談を知らなければ



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