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桂二葉の香り再び〜追いかけた鶴瓶をゲストに独演会

先月に引き続き、桂二葉再びである。

NHKの新人落語大賞受賞後、東京での会が増える桂二葉。大阪コテコテの女流落語家が、11月18日、日本橋公会堂で独演会を開いた。ゲストは笑福亭鶴瓶。入門前の二葉は鶴瓶のファン。追っかけをした挙句、松竹芸能の劇場で働けば、いずれは鶴瓶に会えるのではと考え、見事に目見えることができる。

さらに、落語家を目指すのだが、鶴瓶がこの日のまくらで話していた通り、師匠選びは冷静に考えたのだろう。桂米二に弟子入りする。ところが、鶴瓶トリビュートなのか、かつては髪の毛をアフロにした。

そんな「あわよくば付き合いたかった」鶴瓶を迎えての会である。開口一番は、桂九雀の弟子、桂九ノ一。後に出た二葉が、「落語上手くて憎たらしい」と話していたが、達者な口調で「御公家女房」。「延陽伯」(東京の「たらちね」)かと思ったら、そのバリエーションとでも言うべきネタ。初めて聞いた。

続いて登場の二葉は「向こう付け」。無筆の男が、葬儀の受付をする話だが、特に後半が難しい。様々な参列者が来るので、それを演じ分けなければならない。二葉は無難にこなしていたのだが、主人公の男が、彼女の中に入り込んでいない。従って、なぞるような語りになり、後半の人物描写が甘くなったように思う。

ゲストの鶴瓶。二葉のリクエストで、私落語「青木先生」。鶴瓶が最初に作った作品で、高校時代の先生と鶴瓶を始めとした生徒たちのエピソード。この噺は、何度か聞いているが、まさしく鉄板ネタで、いつも笑ってホロっとさせられる。私も男子校だったので、似たような出来事はあった。誰しもの思い出に通じるところが、この演目の強さなのだろうと思う。

中入り後、桂二葉がかけたのは「子はかすがい」、「子別れ」の下である。鶴瓶も持ちネタにしていて、一度聴いたことがある。

この二葉の「子はかすがい」が良い。酒飲みの亭主、腕の良い大工だが、大阪の花街新町に女をこさえる。女房・子供と別れて、その新町の女と一緒になるが、うまく行くはずがない。女に愛想をつかせ、性根を入れ替えて仕事に精を出す毎日。そんなある日、偶然に別れた息子と往来で出会う。それをきっかけに。。。。

二葉の演じる子供が魅力的である。通常の「子はかすがい」より、グッと存在感が増し、話の中心としてドラマを回していく。それに引き立てられるように、父親と母親が浮かび上がる。「向こう付け」に比べると、演者と登場人物の一体感に違いがあった。

これを練り上げていけば、桂二葉にしかできない「子はかすがい」が出来上がっていくのではないか、そんな予感を感じさせてくれた。

桂二葉、まだまだ“ふたば“である。しかし、“せんだんは二葉より香ばし“、すでに香りを放ち始めている。その香りを楽しみに、また大きく花咲くことを期待して、多くのファンが集まっている



*橘蓮二氏のTwitterでこの日の高座写真等が見られます

https://twitter.com/renji_koza/status/1593969159997894657?s=61&t=1jaizd1nVN0_HOu7n_C3eg


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