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桂二葉チャレンジ!!その壱〜「ジジィども、見たか!」

若い落語家の状況を知るための手がかりとして、NHK新人落語大賞がある。昨年、この賞を受賞したのが、上方女性落語家の桂二葉だった。しかも、審査員全員が満点を出した受賞だった。

ドラマには伏線があった。前年もチャレンジした二葉だが、柳家権太楼などから厳しいコメントをもらい、受賞を逃した。優勝したのは、昨年真打に昇進した、笑福亭羽光だった。

そして、再び挑戦し前述の通り優勝。権太楼さんは少し涙ぐみながら、「一年の精進が見えた」と労いのコメントを出した。そして、受賞後に二葉が発した言葉が、「ジジィども、見たか!」だった。

女性落語家であるが故に、その芸の可能性を否定するようなことをしばしば言われてきた。そうした発言をするのは、概して”おっさん”たち。彼らに対する、意趣返しの言葉だったのだ。

受賞後、活動の幅を広げ、東京にも進出している桂二葉。一度、高座を見たいと思っていたら、今秋から「桂二葉チャレンジ!!」という企画がスタートした。人気落語家をゲストに呼び、彼らの胸を借りての落語会、第1回は春風亭一之輔である。彼も、2010年NHKのこの賞(当時は、新人演芸大賞落語部門)を受賞している。

10月11日、会場は有楽町朝日ホール。今や200回を超えるホール落語会、朝日名人会の場所でキャパは600強。私の席は最後尾から2列目、ほぼ満杯である。

桂二葉は2011年の入門。ちなみに、一之輔が21人抜きで抜擢真打昇進したのが入門から約11年だった。ただし、上方では真打制度はなく、二葉は披露興行を打ったわけでもない中、NHKの地味な受賞だけでこの集客力は驚きである。

開口一番、鈴々舎美馬「真田小僧」に続いて上がった、桂二葉だがマクラの語りですぐさま客席をつかんだ。そして披露したネタは、新人賞受賞時の「天狗さし」だった。大阪のアホな男が、天狗のすき焼き屋(”スッキャキ”と発音してくれるところが嬉しい)をやれば繁盛するだろうという、バカバカしい話。これを二葉は本当に楽しそうに演じた。

続いて上がった春風亭一之輔。拍手は、二葉の時よりも少しボルテージが上がっている。一之輔目当ての客も相応にいるのだろう。一之輔は、若手であろうが女であろうが容赦はしないぞと言わんばかりに、「意地くらべ」を熱演する。

中入り後、再び登場した二葉が演じたのは「佐々木裁き」。利発な子供が、佐々木信濃守を始め、大人たちを翻弄する話で、一昨年、受賞を逃した際にNHKで演じたネタである。女性落語家が子供を演じるのは、演者とキャラクターがフィットする。ただ、私にとっては、「天狗さばき」のアホなおっさんになる二葉の方が良かったように感じた。

桂二葉、ちょっと注目したい落語家である。従来の女性落語家の枠を飛び出しそうな予感がある。「桂二葉チャレンジ!!」、その弐のゲストは春風亭昇太である。それ以外にも、東京での出番が増えている。新しい楽しみができた



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