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ミシュラン以前の時代から〜柏原光太郎著「東京いい店はやる店」

私が大学進学で東京に出てきたのが1980年。同年に山本益博が「東京・味のグランプリ200」を上梓しました。今日ご紹介する、柏原光太郎著「東京いい店はやる店〜バブル前夜からコロナ後まで」(2024年新潮新書)にはこういう箇所があります。

山本益博は、早稲田大学の卒論で昭和の名人、八代目桂文楽を取り上げ、卒業後も落語評論の活動を行なっていました。その彼が、<独学で食べ歩いた結果、「料理評論」というジャンルを新しく開拓したのです>(「東京いい店はやる店」より、以下同)。そして、<彼の登場で「グルメ業界」の考え方は一気に変わったと言っていいでしょう。いまでも食メディアでは「益博以前、益博以後」と言われるほどです>。

「すきやばし次郎」が有名になったのは、まさしく「益博以降」。そして、私が“食文化“に目覚めたのも、この「東京・味のグランプリ200」以降です。

著者は1963年生まれ、私の二つ下ですが、同じ時期に山本益博の洗礼を受けたと思われます。彼は文藝春秋に入社し、老舗グルメガイドで今はなき「東京いい店うまい店」の編集長もつとめます。

本書は、“益博以前“の70年代から、“益博以降“の動向、バブル期とその崩壊、そして「食べログ」に代表されるネットの台頭や、グローバルなガストロノミーの動向を網羅的に書いています。

本書を読みながら、“レストラン“に対する私自身の盛り上がりの度合いと、本書の流れに対する興味の上下動が連動することが分かります。

単純化すると、「第6章 グルメメディアの変遷〜ぐるなび登場」辺りの時代から、私の“いい店うまい店“体験熱は冷めていき、本書と自分も離れていきます。

私の食欲も衰えていき、私が好きだった“レストラン“も別の世界に向かっていったような気がします。

それでも、ちょっと気になった動向は、日本の地方都市に現地でしか使えない食材に目をつけた<デスティネーションレストランが増えているのです>。

昨年、尾道の「ベラビスタ スパ&マリーナ尾道」で素晴らしい時と食事を体験したことを書きました。こうした、旅行と食の合わせ技は、今でも“あり“かなと思います。

この本を読みながら、色々思い出しました。



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