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旅の記憶29(その1)〜グレイハウンド・バスに乗って“キー・ウェスト“へ

ボブ・ディランの最新作2020年発表の「Rough and Rowdy Ways」“Key West(Philosopher Pirate)“という曲が収録されており、先日のコンサートでも演奏されました。

物語のような歌詞は、こう締めくくられます。

Key West is the place to be
If you’re lookin’ for immortality
Key West is paradise divine
Key West is fine and fair
If you lost your mind you’ll find it there
Key West is on the horizon line


キー・ウエストこそ“その場所“
もし、あなたが不死を求めているならば
キー・ウエストは神々しい楽園
キー・ウエストは晴れわたる
もし、あなたが心を失ったなら
そこで見つけるだろう
キー・ウェストは水平線の上に
(拙訳)

大学2年生の夏、私は友人二人とアメリカを旅行していました。東海岸を回った後、フロリダ州マイアミに入りました。私は、マイアミからキー・ウエストに行きたかったのですが、二人は興味を示しません。結果、二人はディズニー・ワールドに、私は一人でキー・ウエストへ。3日後に再びマイアミで落ち合うことにしました。

フロリダ半島は約500km、東京ー大阪間と同じ距離に広がる長い半島ですが、マイアミはそのほぼ南端に位置します。さらに南に下ると、フロリダ・キーズという列島が西に向かって連なり、その西端にあるのがキー・ウエストです。アメリカ合衆国本土の最南端都市でもあります。

何故そこに行きたかったのか。何かの本か雑誌で、作家のヘミングウェイが住んだ場所として紹介されていたことがきっかけだったように思います。そして、アメリカの最はてまで行ってみたいという思いでした。

大きな荷物はマイアミで宿泊していたホテルに預かってもらい、2泊分の荷物を持ってグレイハウンド・バスの発着所に向かいました。初めての長距離バス旅行、南へと向かいながら、映画「真夜中のカーボーイ」のラスト・シーンを思い出しました。体調が悪化したラッツォ(ダスティン・ホフマン)と相棒のジョー(ジョン・ボイト)、ニューヨークからバスで温暖なマイアミへと向かうのでした。

半島の南端からは、橋で島と島が結ばれていきます。最初に渡ったのがキー・ラーゴ。ジョン・ヒューストン監督、ハンフリー・ボガート/ローレン・バコール主演の映画「キー・ラーゴ」(1949年)の舞台です。

車窓から海を眺めているうちに、最終地点のキー・ウェストに到着しました。レンタル自転車を借りて、手頃なモーテルを探すのですが、南の太陽光線はきびしく、半ズボン姿だったので太ももが焼かれました。モーテルに入るや、シャワーで水をかけ冷やしたことを覚えています。

暑い夏でしたが、クーラーもないシンプルなモーテルの部屋。“思えば遠くに来たもんだ“という気分でした。

そして、火照った足でペダルをこぎながら、ヘミングウェイを探しに出かけたのです


*余談ですが、友人二人はマイアミから空路、ディズニーワールドのあるオーランド(Orland)に向かいました。マイアミ空港でチケットを買おうとしたところ、“Orland“がなかなか通じず、オランダ行きの航空券を買わされそうに(笑^^;)。幸い、我々はマイアミで再会し、旅を続けることができたのでした


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