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「桜姫東文章 下の巻」〜玉三郎・仁左衛門による大団円(その1)

4月の上の巻に続いて、今月の歌舞伎座では鶴屋南北作「桜姫東文章 下の巻」が上演されている。坂東玉三郎と片岡仁左衛門による舞台である。4月、二人の醸し出す“色気”に圧倒されたことを書いたが、下の巻ではさらにドラマの深さに感じいった。

高僧清玄(仁左衛門)との関係を咎められ追放された桜姫(玉三郎)は、愛する悪漢権助(仁左衛門)と庵室で再会する。この時の玉三郎は極めてチャーミングである。

権助が外出すると、殺害された清玄が蘇生し、桜姫にアプローチ、拒絶する桜姫と立ち回りとなり、清玄の喉に包丁が刺さり絶命する。と書くと、陰惨な場面がイメージされるが、舞台はあくまでも美しく、生死を彷徨う清玄と桜姫が織りなすエロティシズムに見物は圧倒される。

桜姫を女郎屋に売り飛ばす算段を付け、帰宅する権助。愛する男の頼み故、女郎屋に行く決心をする桜姫。一方で、背後には死んだ清玄の幽霊。さらに権助の顔には清玄と同じ痣が浮かび上がる。普通の女性なら失神するところだが、吉田家再興を胸に秘めるお姫様である、むしろキリッと「所詮この身は。毒くはば」とセリフを放つ。玉三郎、素晴らしい!

後半、女郎に落ちた桜姫が、権助のもとに戻る。この時の、桜姫は<宿場女郎に転落したお姫様>(橋本治著「大江戸歌舞伎はこんなもの」)である。従って、しゃべるのは女郎言葉とお姫様言葉の異種混合になる。橋本治によると、大南北の<とんでもない写実主義>であり、<葛藤を剥き出し>にしたドラマである。そして、玉三郎の技量はこの難しい表現を自然にこなす。

この後、桜姫は権助が実は親の仇であり、自らの元に戻ってきた権助の間の赤子は、吉田家再興にとっては存在してはならない血ということで、権助と赤子を斬り殺す。そして、権助が所持する家宝を取り戻し、お家再興を遂げる。

この舞台を見ながら、様々なことを考えたが、続きは明日


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