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追わずにはいられない若者の日常〜真造圭伍「ひらやすみ」

以前にも書いたが、私のキャパシティーでは、“今のマンガ“をフォローする余裕がない。それでも、凄い作品が生まれていることも事実なので、一定の情報収集はしたい。

そんな私にとって、中条省平が朝日新聞に連載している「中条省平のマンガ時評」は、信頼できるソースの一つである。その1月19日付の記事では、雑誌「フリースタイル」が発表した“THE BEST MANGA2022 このマンガを読め!“の結果を紹介しつつ、上位5作のうちの2作について言及している。

結果だが、1位松本大洋「東京ヒゴロ」、2位は私も紹介した、藤本タツキ「ルックバック」、3位真造圭伍「ひらやすみ」、4位はこちらも以前触れた、ちばてつや「あしあと」。5位は気になったので購入したも未読の近藤ようこ「高丘親王航海記」である。

「東京ヒゴロ」、「ひらやすみ」とも面白そうだったので購入、しばらく放置していたが、週末ふと「ひらやすみ」を読み始めた。

続きが気になるドラマが起こるわけではないけれど、読み始めると止まらなくなるマンガがたまにある。そんな作品である。

主人公は、俳優を志望するも断念し、阿佐ヶ谷でフリーター生活を送る29歳のヒロト。ひょんなことから、平屋で一人暮らし、年金生活83歳の老女と知り合い、定期的に食事をご馳走になる関係となる。そして、老女は他界するが、その遺言でヒロトはその平屋を譲り受ける。

ほどなく、ヒロトの従姉妹なつみが美大に進学し上京、ヒロトの住む家で同居を始める。そして、マンガはヒロト、なつみ、そしてその友人たちの日常が描かれていく。

タイトルの「ひらやすみ」は、“平屋“と“休み“をかけたものだろうが、そのイメージ通り、ゆるーい時間が流れながらも、そこに生きる若者にとっては、一つ一つの出来事が、その人生のパズルを埋めていく重要なピースである。

私は1986年に結婚して以降、2年強、阿佐ヶ谷に住み、その間に長女が生まれた。職場は吉祥寺で、若さゆえの様々な出来事が自分自身にも、周囲にも起こった。たわいのないことが多かったが、全て自分の一部である。

このマンガに登場する、阿佐ヶ谷の商店街、中央線沿線の独特の空気を懐かしみつつ、優れたテンポの展開を追った。そして、ヒロトたちが通過している、優しくもあり厳しくもある日々を追い続けることが止められず、既刊の2冊を一気に読んだ。

彼らの今後を早く見たい


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