アカデミー賞に輝かなかった作品 その2〜「シカゴ7裁判」“全世界が見ている!”

「Mank/マンク」はアカデミー賞発表前だったが、もう1作気になっていた「シカゴ7裁判」は発表後にNerflixで観た。

事件は1968年に起きる。秋の大統領選挙に向け、シカゴで民主党の党大会が開催され候補者指名が行われる。これを、ベトナム反戦運動等に関する主張の絶好の機会と考えたいくつかのグループが、シカゴに赴きデモを実施。警察との小競り合いとなって、暴力事件に発展する。

この事件を引き起こした張本人として、8人が起訴され法廷でその罪が争われる。途中、8人の中の1人が除外されるので、残りが“シカゴ7”と呼ばれるようになる。その法廷ドラマが、この映画である。

背景が若干ややこしい。1961年に大統領に就任した民主党のジョン・F・ケネディはベトナム戦争への介入を決める。63年のケネディ暗殺後に大統領になり、64年で再選を果たすジョンソン大統領は、ベトナムへの増派を進め、米兵の戦死者は増加していく。

1968年は、反戦ムードが高まる中、3月に民主党大統領候補のロバート・ケネディが暗殺され、4月にはマーチン・ルーサー・キングが殺される。 こうした社会情勢の下、8月に開かれた民主党党大会である。

さらに、この暴動事件の後に実施される大統領選挙においては、民主党は敗北し、共和党のニクソンが大統領に選出される。民主党政権時代の司法長官はリベラルで鳴らしたクラーク氏だったが、ニクソンの指名によるミッチェル新司法長官が、シカゴ7の罪を追求する。

前置きが長くなったが、オーソドックスな面白い法廷ドラマであり、楽しめる。そして、ここでも底流に流れているのは、“公正”、“正義”であり、民主主義が揺れている現在に通じるテーマだと感じる。そして、今の世界に対しても向けられていると思われるキャッチフレーズが、「The Whole World is Watching!〜全世界が見ている」である。

役者では、サシャ・バロン・コーエンマーク・ライランスの存在感が印象的。前者は、残念ながら受賞は逃したが、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。

王道の映画すぎて、アカデミー賞とはならなかったが、観てよかった映画である



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