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専門家の「効果がない」と、専門家でない人の「効果がある」どちらが信用できるか?

ネットやメディアを通して、日々多くの情報が流れています。あわてず冷静に情報の真偽を見極めて行動したいものです。情報の真偽をどのように見抜くかは、その後の行動を左右します。行動の仕方によっては、時間・お金・信用、時にはいのちを失うハメになるため、リスクは慎重に見極めたいですよね。この記事では、情報との付き合い方について気をつけたい視点の一つをご紹介いたします。

「専門家は否定」の意味とは?

新型コロナウイルス対策の記事、ふとタイトルの表現が気になりました。

「専門家は否定」とあります。これに対する、専門家のコメント。

専門家は「免疫力を高めるという科学的根拠はない」と指摘している

専門家は”科学的根拠はない”とだけ言っています。「他は同じ条件の人のうち●●を食べる群と食べない群を分け、免疫力の違いにより差が出る身体的状態の数値を比較して、統計的に有意な差が出た」という論文が出れば、”科学的根拠がある” となります。前述の記事にある ”科学的根拠はない”というコメントは、世界の医学界で合意の取れているエビデンスがないという意味合いで使われていると考えられます。

一方で、納豆やヨーグルトが免疫の7割が集まると言われる腸内環境を整えてくれる上質の発酵食品であるという考え方があります。

仮に おばあちゃんの知恵のように、日常生活で経験的に理解されていることでも、科学的根拠がなければ、専門家は「効果があるとは言えない」と述べるしかありません。「効果がない」とは言っていないことに注意です。

「科学」とは?

「科学」つまり「人為的な要素に左右されず、合理的なルールに基づき一定の想定できる結果が得られる知識体系」があること。それによって説明ができること。そこで初めて専門家は「効果がある(ことを示す科学的根拠がある)」と言うことができます。

科学的根拠がある、と言うならば、通常は「仮説」に基づいて行われた「実験結果」から「統計的に有意」な結果を得ることができたということです。誰がやっても同じ条件ならば再現できるというものです。条件設定と結果の解釈は注意深く行われるのが普通です。

これは、法律のように独特な言い回しと同様です。(最近わたしが出会った法律用語は「善良なる管理者の注意義務」です。”善良なる”ってなんだろう?)

科学的根拠がない=効果がない?

専門家が「科学的根拠なし」と言ったからといって、果たして「効果がない」となるのでしょうか。まだ科学的根拠がないからといって、効果なしとは言えないというのがわたしの考えです(効果があるとも言えない)。効果はあるがまだ科学的根拠がないものはあるはずです。科学的根拠がないものはすべて効果がない、というならば、現状の科学は完全であり、完成された体系である必要があり、今後の科学の進歩はもう期待できません。だって、すでにすべて明らかになっているのですから。

犯罪と逮捕の関係にたとえてみると...

科学的根拠がある/ない、効果がある/ないは2軸をとって4パターンに分類するのがわかりやすいと思います。他に置き換えるならば、逮捕と犯罪の関係も近いです。

(A) 犯罪を犯して、逮捕された(容疑者)
(B) 犯罪を犯して、まだ逮捕されていない(逃亡犯)
(C) 犯罪を犯していないのに、逮捕された(冤罪)
(D) 犯罪を犯していないし、逮捕もされていない(善良なる市民)

「犯罪を犯す=効果がある」、「逮捕される=科学的根拠がある」 という対応で考えると、専門家の「効果がある」は (A) を指しています。専門家の「効果があるとは言えない」は (B)(D)になります。(C)は実際は真実と異なっており誤解されているものですが、このケースでは専門家は「効果がある」と判断します。

一方で、専門家でない人の「効果がある」はどれでしょうか?科学的根拠の有無は問わないので、その人の基準で(D)以外のすべて、つまり(A)〜(C)となります。スタンスによっては(C)は除外されるかもしれません。「科学者は効果があると考えているが、実は効果はないのではないか(証拠はないけれど)」というケースです。科学的根拠がないので、あくまで「その人の基準」ベースとなります。その人がどれくらい信頼できるのか次第です。見知らぬネット記事の情報について言えば、鵜呑みにするのはちょっとリスキーですよね(この記事もよく吟味なさってください)。

結論

最初の問いに戻りましょう。専門家の「効果がない」と、専門家でない人の「効果がある」どちらが信用できるか?

どちらも、それだけでは信用できません。根拠を注意深く点検して、リスク取れる範囲で試すのが一番の方法だと考えます。一次情報が一番強力です。

誤解を与えるネット記事のタイトルによって、読者を釣る力学が情報提供者側にあることを意識したいものです。読者側の心理をあざとく読んでいるか、あるいは単純に違いを理解していない可能性があります。いずれにせよその記事の信用度は下がってしまいます。

専門家が「科学的根拠がない」と言ったからといって「効果を否定」とは言えないのでは?という疑問が端緒でした。白黒つけて0/1で考えるのではなく、バランスよく情報を並べてみて、自分が最も納得できる後悔しない選択肢を選びたいものです。

この記事が、あなたが何かを考える きっかけ になれば幸いです。


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