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4回の授業を終えて

(書き手)古屋美登里

 翻訳塾が昨年の10月から始まりました。初めからZOOMでの授業になりましたので、講師も塾生も手探りで進んでいくような状態でしたが、4回の翻訳課題をこなしていくうちに、塾生のみなさんの原文に対する取り組み方、訳し方、文章の流れへの意識などが驚くほど変化していきました。これまで翻訳したことのない方が何人かいらっしゃるのに、たった4回で英文への接し方が変わり、文章の質もどんどん高くなっていったのです。高い可能性と潜在能力がどなたにも備わっていることに改めて驚きました。先日、4ヶ月前に提出した自分の文章を読み返したある塾生が、「こんな拙い文章を書いていたなんて恥ずかしいです」と言っていました。これは本人にとっても楽しい発見だったと思います。
 前期3回はフィクションを中心に短篇を訳しました。後期3回はノンフィクションの文章を訳しています。フィクションの翻訳では、回を進める毎に翻訳する楽しさのようなものが、画面の向こうから伝わってきて、わたしとしてはそれがなにより嬉しいことでした。翻訳することは本当に楽しいことだからです。
 また、この授業は教える側にもとても勉強になるものでした。訳文を添削するときに、訳し手が英語にどのように引きずられているのか、最適な言葉へどのようにたどり着いているのかといった、これまであまり意識していなかったことを考えられるようになりました。これは翻訳を教える立場になって見えてきたものです。
 
 この塾の特徴のひとつとして、フランス文学者で翻訳家の稲葉延子先生と現役の書籍編集者である内藤寛さん(亜紀書房)をアドヴァイザーとしてお迎えしていることが挙げられます。おふたりには毎回授業に参加していただき、広い視野から表現や文化について塾生のみなさんに助言してくださっています。
 さらに今期は、エッセイストでジャーナリストであり翻訳家の内田洋子さんにZOOMでの講演をお願いいたしました。塾生のみなさんにとって刺激的な時間だったと思います。来期も豪華なゲストをお招きする予定です。
 
 本塾はささやかな翻訳塾で塾生も少数ですが、だからこそ翻訳や文章の表現について集中的に指導することができます。この度、塾生を若干名ですが追加募集することになりました。本気でプロを目指す方のご参加をお待ちしております。