「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」を読んで号泣する奴-余白の読書日記
こんにちは。小澤です。
ゴールデンウィーク、皆様はいかがお過ごしでしたか?私は、とあるお笑い芸人さんの書いた恋愛小説を読んでみました。読んで「みました」と無意識に打ちましたが、まさに今回の小説はお試し読書。笑いのプロである芸人さんが恋愛小説を書いたら、どんなものなんだろう?という好奇心でした。
実は、私の一番好きなお笑いコンビ「ジャルジャル」の福徳秀介さんが処女作「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」を2020年に発表していまして、ずっと気になってはいたんです。ただ、ジャンルは恋愛小説。普段このジャンルを読まない私は手に取らないまま2022年を迎えていました。しかしこれまた偶然、余白が店を出すBookshop Travellerにこの本が入荷されたんです。これは運命だ、買うしか無いなと思って先月購入。満を辞してゴールデンウィークに読んでみました。
号泣。なんとも浅い感想ですが、自然に流れる涙を止めることはできませんでした。あらすじは、関西大学(ちなみにジャルジャルの2人とも関西大学OB)に通う大人しい大学生「徹」の恋物語。キャンパスと、アルバイト先の銭湯「めめ湯」と、喫茶店「喫茶ため息」を主な舞台として展開する恋は、大学生の普通の恋かと思われました。友達の少ない徹は、そのことを恥ずかしく思っていて、周りの視線が痛いから、日傘をさしてキャンパスを歩きます。そんな彼は、同じ講義を受講していていつも一人で行動している桜田さんが醸し出す不思議なオーラと、孤独を全く気にしないかのような彼女の姿に興味を持ちます。徹は勇気を持って桜田さんに声をかけて、仲良くなって、喫茶ため息でデートもします。順調に進んだかのように見えた恋は、ある日を境に暗転します。ある日とは、アルバイト先の「めめ湯」で一緒に働く大学生のさっちゃんから突然告白された日。なぜさっちゃんの告白と桜田さんとの恋に関係があるのか。その関係は直接的な関係なのか、それとも運命的な関係なのか。あーここからが面白い!のにネタバレになるから話せない。。。
この本の好きなところは、まずなんといっても繊細な描写。登場人物の感情、風景、一つ一つの細かな描写の目の付け所が、日常なんだけど普通言葉にしないところなんです。そこを上手く嫌味なく切り取るのがすごくうまい。「ああ、たしかにこんな光景見たことあるし、こういう行動するなあ」と思うことが多かった。その積み重ねがすごくて、まるで自分もこの物語の中でキャンパスライフを送っているかのようでした。
また、登場人物のセリフ(格言と言ってもいい)が沁みるんです。切り取って載せるだけでもいいですが、ストーリーへの散りばめ方が渋いんです。このセリフが、ストーリーに厚みというか深みを与えているんです。
他人に、自分の顔を思い出してもらうとき、自分の顔が笑顔だったら嬉しいな
嫌いな人が困ってたら助けてあげて「私に助けられて、ざまあみろ」って思いなさい。
「幸せ」を少しでも早く伝えたくて、「好き」を少しでも時間をかけて伝えたいから
ちなみに、タイトルの「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」も格言の一つに由来します。その意味は是非読んでお確かめください。
さらに、ファンならではの楽しみ方として、福徳さんの片鱗がチラチラと見え隠れするのを見つけるのも一興です。母校である関西大学が舞台ですし、ライブに行くほどファンのスピッツの曲が登場しますし、福徳さんが高校生の時にお父さんを亡くされたこともこの物語に影響している気がします。
普段読まないジャンルを読むのはいいものですね。いい出会いでした。ジャルジャルのことも一層好きになりました(笑)それではまた。