これは『アクシデント・レポート』が最高に面白かったこととは、全く別の話です。
今からすごく恥ずかしいことを告白する。
なんだかもう、言っちゃいたい気分なのだ。
樋口毅宏の『アクシデント・レポート』という小説を、ここ2週間持ち歩いていた。600ページ超、ハードカバーの2段組で、価格は3,100円(税別)。存在がクレイジーだ。
この厳つい単行本のおかげで、トートバッグを右側に掛ける私のコートは、そこだけ擦れてテカテカしている。
でもそのテカテカを、悪くないと思っている。むしろテカテカさせたままでいたくて、ブラシをかけないでいるほどだ。
真っ黒い表紙のまま、カバーは掛けていない。学生カバンのように、ダメージがないほうがダサいタイプだ。
それを電車の中で熱心に読む私が、最高にクールだと思っている。
だから、ちびちびと、電車の往復にしか読まないと決めて、2週間も長引かせたのだ。人目のない自宅で読むにはもったいなかった。
インスタにも、本の厚みがわかるような写真を投稿した。いつもアイスクリームばかりのゆるふわ女子だからこそ、意外性があってかっこいい。むしろそのために今までアイスクリームの写真ばかりを投稿してきたといっても過言ではない。
私の「本が好き」という100の気持ちのうちの何%かは、「本が好きな私が好き」という気持ちである。
あぁ、認めたら楽になった。
本当は、分厚くて難しそうでみんなが知らないような本に熱中できる私を、誰かに見てほしかったのだ。
それを認めてもなお、私が本を読む姿はかっこいい。電車の乗り換えの間、本をカバンに仕舞わずに小脇に抱えているのは、決して仕舞うのが面倒だからではないのだ。
こんなことを書いて、本好きのみんなが「そんなこと1ミリも思ったことないけど…」と引いてしまったら、だいぶ恥ずかしい。
でも、少なくとも私は、自分の好きな人に見せるなら、スマホに文字を高速で打つ姿より、文字がびっちり詰まった真っ黒いページを高速でめくる姿を選ぶ。
ちょっと見て見て!おれ、超かっこいい!ってね。
「本が好き」の「好き」には、こうでなきゃいけない決まりも、優劣もなくて、どんな風に好きでもいいと思っている。それをバーンッてオープンにしちゃえたら、もっと本って売れちゃうんじゃないかなって思っている。
アクセサリーでもインテリアでもいい。インスタのために買ったって、読むために買ったって、その人が満足ならそれでいい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?