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日めくり文庫本【12月】

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記事一覧

『南方民俗学』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月1日】 南方熊楠は、こういう一九世紀西欧の人類学の世界と出会い、まず驚嘆し、熱狂…

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『人生、成り行き―談志一代記―』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月2日】こうやって噺を変える  ——師匠が何かの噺を作り変えるという時、まずどこか…

『闇の奥』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月3日】 マーロウは言葉を切った。いくつもの灯りが河面を滑っていった。小さな緑色の…

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『人形の家』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月4日】ノーラ そのクリスマスツリー、うまく隠しとくのよ、ヘレーネ。子供たちに見せ…

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『孫子』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月5日】虚實篇 一  孫子曰わく、凡そ先に戦地に処りて敵を待つ者は佚し、後れて戦地…

『巨匠とマルガリータ』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月6日】 このとき、さきほどから悩まされていたしゃっくりを抑えようとして息を殺した…

『ホモ・ルーデンス』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月7日】 ポトラッチにおいて優越性はただ単純に財物を贈ることによってのみ示されるわけではない。それはもっと驚くべき方法で、つまり、彼自身の所有物を破壊することによっても示される。財物を手放すこともできうることをこれ見よがしに見せつけて優越を誇示するのだ。また、これらの財物の破壊は劇的な儀式や誇り高き挑戦をともなって行われる。この行為の形式は対抗競技の形をとる。ひとりの長が銅の壺を割り、毛布の山を焼き、カヌーを毀せば、相手側は少なくとも同じものを同数だけ、さらに望むらくは

『三酔人経綸問答』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月8日】 紳士君、紳士君、思想は種子です。脳髄は畑です。あなたがほんとに民主思想が…

『勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪―ヘミングウェイ全短編 2―』 – 日めくり文…

【12月9日】 物事を考えないようにすれば、それはそれで素晴らしかった。生まれつき肚がす…

『失われた時を求めて 第二篇 花咲く乙女たちのかげに』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月10日】 一度は私もあやうく決心しかかったが、彼女はちょうど「印刷中」だった。別…

『ソルジェニーツィン短篇集』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月11日】 私たちは運よく窪地の井戸で水をたらふく飲んで、水筒にもいっぱい詰めこみ…

『人と物3 小津安二郎』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月12日】 とにかく私がキャメラに向う折に根本的なものとしていつも考えているのは、…

『ウォーホル日記』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月13日】一九八三年一二月一三日 火曜日  昨日は大雨だった。ベンジャミンとマジソ…

『ナイン・ストーリーズ』 – 日めくり文庫本【12月】

【12月14日】 彼女は電話が鳴ってもいっさい何も中断しないタイプの女の子だった。電話なんて思春期に達して以来ずっと絶え間なく鳴っているみたいな顔をしていた。  小さなマニキュアのブラシを手に、女の子は電話が鳴っているのをよそに、小指の爪に取りかかり、爪半月のところにアクセントつけていた。それからマニキュアの壜に蓋をして、立ち上がり、左の——濡れた方の——手を宙で前後に振った。そして乾いた方の手で、吸殻が山になった灰皿を窓際の椅子から取り上げ、ナイトテーブルまで運んでいった。