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【選んで無職日記80】ハローワークの推し

2024/10/3

 今日はついに人生一回目のハローワークに行くために朝八時半に起きた。人生一回目というのは本当は嘘で、一度地元のハローワークに行ったが、本格的に失業保険を受け取るための手続きをするのは初めてだ。
 ハローワークに行くのに二つ選択肢があって、街中の歩いて行けるところと、車で七分程度の場所にあるのが二つ目で、街中は混んでいるだろうからと車で行ける場所の方を昨日のうちに選択していた。

 昨日ローソンで買っておいたコーヒークリームのパンを朝ごはんに食べる。ベーカリーカフェ「パンとエスプレッソと」とのコラボ商品だというので購入した。この店は私が東京に住んでいた時に、出勤していた表参道で何度も店の前を通ったし、実際に利用もしたので何だか趣があるというか、表参道の横道を思い出させるトリガーの一つだ。Netflixで見ていた『極悪女王』を見ながら歯磨きをし、何だか感動してちょっと泣いてしまった。

 メイクして髪を整え、金髪のままで行っていいのかなと思いながら車で向かう。途中道路が通行止めになっていて迂回したが、ほとんど車に乗らないうちにハローワークに着いた。

 車を停めて中に入ると、すでに人が何人も待合室で待っていた。もしかして結構待つかな、と思いながら総合受付で案内してもらう。離職票はここで提出し、アンケートや銀行口座の番号を記入するよう言われたので書き上げると、二階に案内される。随分たくさんのA4の紙が入ったファイルを渡されたので、げんなりした。私は情報が沢山入った紙を渡されるのが苦手なのだ。出来ればデータで貰いたい。電子化が進んでいるとはいえ、こういうところは永遠に紙と友達なのが定説だ。

 二階につくと貰ったファイルを提出する場所があって、名前を呼ばれるまでしばらく待合スペースで待つ必要があった。持ってきた本を読もうか、どうしようかなと思っている時に、聞いたことのある声が後ろから聞こえた。
 オガタ(仮名)だ。
 ちょっと男性にしては高めの、ハキハキしたしっかりとした話し方。先に来ていた別の来館者に何かを説明していたのだが、あの話し方はオガタに違いない。
 彼は一度私が地元でハローワークに行ったときに、実際に私が失業保険を申請するハローワークにもお問い合わせくださいと言われ、電話した際に対応してくれた人だ。電話越しに色々と調べてくれ、正しい申請条件を教えてくれて、説明もわかりやすくて懇切丁寧で、その時に「このハローワークにはシゴできがいるんだな」と思っていたのだ。
 電話口では大変感動したのだが、それ以降彼のことはすっかり忘れていて、今日声を聴いてあの時の感動が再び蘇った。オガターーーーーー!!!!!
 こういう市の公的機関だとどうしても普通になりがちなオフィスウェアだが(そもそもこのハローワークはわりと皆カジュアルで、デート服っぽいワンピースの女性もいた)、その中でもオガタはしゅっとしたベージュのセットアップを着て、公務員らしからぬオシャレさで、想像をはるかに超えて素晴らしかった。同僚からも慕われているのか、何か質問を受けて、わかりやすく完璧な回答をしているところも拝見した。
 もうここまでくれば推しである。ハローワークで推しが見つかるとはおもっていなかった。彼に案内された人たちは皆満足して帰るだろうなと思う。残念ながら推しの薬指には指輪がはめられていたが、あんな旦那さんなら奥様も幸せだろうなと思うレベルの人材だ。

 そんなこんなで本を読む暇もなくカウンターに呼ばれる(残念ながらオガタのカウンター業務はないようだった)。担当者のお兄さんに、先ほど記入した紙を見られながら質問される。
 どうして退職されたんですか、と聞かれたときに、どうして。と思った。
 理由はある。やりがいがわからなくなった。幸せじゃないと思う瞬間が多くなった。上司と上手くいかなかった。条件はよかったのに、手放そうと思ってしまった。
 総合的な回答として、「辞めたくなってやめました」と言った。言った後で、馬鹿な発言したなと思った。
 周りの環境とか、待遇面とかですか?と更に質問され、そうですね、と返す。待遇は良かったですが、やりがいを感じられなくなって。
 そうですか、と言われて、紙にまた色々と書き込まれていった。

 これで一旦こちらでの対応は終了なので、次は一階に行ってくださいと言われ、更に量の増えたファイルを渡される。
 一階に降り、どこに行けばいいのかわからないので総合受付に戻ると、整理券を渡された。ちょっとお待ちの方が多いですがと言われたが、そこまで長く待たずに整理番号を呼ばれた。
 ここではハローワークでの求職者としての登録がされる。先ほど書いたアンケートをもとに、どういう仕事に就きたいかを聞かれた。今のところまだ仕事をしたい気分ではないので、適当に回答していくと十分ほどで登録が完了した。
 最後にご説明なんですけど、と担当者の方に言われ、A4の紙を見せられる。市内のハローワークの一覧だった。
 失業保険の申請はお住いの担当区域でないと対応出来ないのでご注意くださいと言われ、その情報を初めて知る。昨日の夜、もし街中のハローワークを選んで行っていたら今日は申請が出来なかったことになる。なんでもちゃんと調べてから行かないとだめだなと反省。

 ハローワークから出て、郵便局で用をすませ帰宅。昼は野菜炒めを作ったが、夫が美味しい美味しいと言ってくれたので嬉しかった。

 今日はこれ以外に予定がなかったので少し勉強をし、何だか眠かったのでベッドに横になるといつの間にか寝てしまっていた。起きてYoutubeで”長与千種”を検索し、髪切りデスマッチを見る。まあまあの血が頭から流れていて、これはYoutubeではありなのかな、と思う。
 起きて夕食用にシチューを作り始め、余っていたサツマイモを切っていれる。ズッキーニやキノコも入れたので炒め始めから秋の雰囲気があり、大変良かった。

 いつまで無職でいようかな、と思う。お金の心配は一旦置いておくとして、次にどんな仕事がしたいのだろうと考える。
 今はこうしてnoteを書いたり、エッセイを実際に印刷して本にしたりするのがとても楽しい。これだけ続けられるならどれだけストレスがないだろうと思う。
 しかし仕事はどうだろう。今までにやってみたい仕事もやったし、特段やりたくはないけれど待遇のいい仕事もした。どちらも理由が出来て辞めてしまった。
 私はまた社会に戻れるだろうか?それとも自分で何かしていくのだろうか。
 どうやって生きていくのだろう?どうやって生きるのかな。

 

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