【選んで無職日記63】意地悪な私を自認した時
私は小学生の頃、自分でもわかるほど他人に意地悪な人間だった。一つ印象に残っている意地悪エピソードがあるから紹介したい。
私は小さい頃にクラシックバレエを習っており、小学校が終わった後、同じ学校に通っていたMちゃんとYちゃんと、市内にあるバレエスタジオに通っていた。まずは小学校に一番近いバス停から街中まで二十分ほどバスに乗り、その後また別のバス停からバレエスタジオの最寄りに降りることも出来たが、田舎なので本数がかなり少なく、バスに乗り過ごすと子供の足で二十分ほどの距離を徒歩で向かうことがほとんどだった。この道のりが子供ながらに結構苦痛で、毎回「またこの道を歩かねばならない」という負の感情を抱えていた。
ある日、学校が終わってMちゃんとYちゃんとバスに乗り市内まで出た。その日は母の仕事が休みだかで、市内からバレエスタジオまで家の車で送ってあげるから、お友達も一緒に乗せてあげると言われていた。
だが、当時の私は意地悪女子だったので、その二人を一緒に乗せていくのが何故か嫌だった。友達のお母さんが車で送ってくれたことは今までに一度もないのに、どうしてうちのお母さんだけが二人もまとめて送る必要があるのだろうと思ってしまった。それに加え、私は歩くことが当時はあまり好きではなかったので、”歩かなくてもよい”というラッキーパンチを自分だけのものにしたい、というような気持ちだったと思う。
その日、市内終着のバスを降りた私は二人に向かって、「私お母さん迎えに来てるからじゃあね」とか言って別れ、またバレエスタジオで合流するという意味不明なスケジュールになった。
車で待っていた母は何故MちゃんとYちゃんがいないのかと理由を聞いてきたが、ごにょごにょ言ってごまかした記憶がある。
この事件のあと、私って意地悪なのかなあと自らを振り返った。二人は優しいから怒ったりしなかったと思うが、三人の雰囲気が一瞬悪くなったように感じたし、母も私の躾には厳しいタイプだったから、二人を連れてこなかったことにお咎めなし、というのはまずなかっただろう。それに自分自身、”自分だけ良い思いをした”という事実にかなりモヤモヤしていた。本心ではそうしたかったからそうしたのに、そうした後に結局自分って意地悪な人間なんだな、と思うと、今の自分は嫌な人間だと感じた。車だって、どうせ私を送ってもらうんだったら友達が一緒でも変わらないし、その方がみんなで楽しくバレエに行けたはずだ。
そのことがきっかけになって、意地悪なことはなるべくしないようにしようと思い、小さな私は改心した。あの出来事がなければ、未だに私は意地悪な人間だったかもしれないと思うと、小さなうちに改心できて良かったなと思う。
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