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長い長い作文 1~4話まとめ

「長い長い作文」とは?
クラウドファンディングのプロジェクトページ作成にあたり、今までを振り返って私・三浦が書いた作文。原稿用紙20枚分に及ぶ。
プロジェクトページに書き切れなかったhontenへの想いを伝えるため、クラウドファンディングサイトの活動報告ページに少しずつアップしている。

プロジェクトページ
長い長い作文をより多くの写真付きで楽しんでいただけます。https://kibidango.com/1267

第1話「本と体育館」

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冬の体育館。壁際に並んで座り、本の話をしたことを覚えている。
好きな作家さんの名前を挙げたら、彼女もその人の本を読んだことがあって、話が盛り上がったっけ。
彼女は当時大学生で、専攻は日本文学。
『言葉が好き』という点でも、彼女と私は共通していた。

彼女は、私の当時の彼氏の友達の彼女だった。
彼氏たちはあるスポーツの社会人チームに属しており、練習の際に彼女を紹介してくれたのだった。
さやちゃんの名前と漢字を知った時、とてもさわやかで綺麗な名前だ、と思った。
彼女は私の1歳年下だったが、波長が合う感じがした。
ダブルデートの話が持ち上がったが、それは実現することなく彼らとの関係は終わった。

でも不思議と、さやちゃんとの縁は切れなかった。
私も彼女も星野源が好きで、ライブに誘ったり誘われたりした。
半年~1年近く会わない期間もあったのに、月日を重ねるごとに彼女とは仲良くなっていった。
一緒に旅行に行くこともあった。
さやちゃんとは趣味嗜好や価値観が似通っていて、ほかの人とはできない会話を楽しむことができた。

2019年4月。
私は岐阜県から栃木県へと引っ越すことになった。
愛知県在住のさやちゃんとは距離が離れてしまったが、文通をして繋がっていた。
今の時代に文通? と驚かれるだろうか。
けれど、私と彼女にとってはLINEと同じようにごく自然な選択だった。

お互いInstagramをやっていたがアカウントは知らず、後になって、二人して届いたレターセットの写真をアップしていたことを知った。
行動まで似通っていたのか、とびっくりしたと同時に、嬉しかった。

2019年8月末。
さやちゃんが東京まで来てくれると言うので、東京で会うことになった。
『BUNDAN』という、様々な小説からイメージしたメニューを提供するブックカフェでお茶をした。
久々の再会に話が尽きず、気付けば夕方のラストオーダーの時間になっていた。

この時、私は自分の夢を彼女に打ち明けていた。
「私、自分のお店を持ってみたいんだ。」
実現できるとは到底思っていなかった。単なる理想に過ぎなかった。架空の世界の話だった。

第2話「あきらめていた二人」

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だって、私にはまずお金が無い。
自慢ではないが、社会人になってからお金に困らないことがなかった。
ノウハウや経験も無いし、人付き合いも苦手で人脈も無い。特別な技術や才能があるわけでもない。
こんな私には無理だ。とあきらめていた。自分に自信が無かった。

2019年10月。
さやちゃんから思わぬ手紙が届いた。
「実は私も、自分の本屋さんを開くことに興味があって。」
なんということだ!
私と同じ夢を、私の大切な友達が同じように抱いていたなんて!
自分を肯定してもらえた気がして、涙が出るほど嬉しかった。

しかし、その手紙の続きはこうだった。
「私は本当にあこがれの段階で、このまま動かないのかもしれないけど…。」

そんな悲しいこと言わないで…あきらめないで!
私は心の中でとっさに叫んだ。
自分の夢は簡単に否定していたのに、さやちゃんには、大切な人にはあきらめてほしくなかった。

矛盾している。と思う。
でも、この矛盾こそが、『企画本屋honten』を生み出したのだった。

それから、どうにか彼女の夢を叶える方法はないかと考えた。
私がお店を持てたら、そこにさやちゃんのコーナーを作って……いや、それでは何年後になることやら。そもそも可能かどうかも分からない。
なにかあるはず……必ず道はあるはずだ……。

はたと気付いた。
大きな夢を、一気に完璧に叶えようとしていた自分に。
そうじゃなくて、今できることから少しずつ叶えていけばいいんじゃないか?

しかし、何をどうやればいいのだろう。
他と同じことをしていたのでは、つまらない。

昔から、流行物は敬遠する質だった。
みんなが知っていることよりも、みんなが知らないことに惹かれたし、人と違うことをしたがった。
中高生の頃は、『企画サイト』と称するサイトを運営していたほどだ。

私は考えた。
考えて考えて、考えが煮詰まって、ええいもう寝てしまおう! と部屋の電気を消し布団をかぶった直後だった。

『本を美術館みたいに額に入れて飾って販売する。』
ポン。
真っ暗だった頭の中に、この言葉が突然降ってきた。

第3話「二人目の店主」

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そこからは、握った手の中から小さな国旗がスルスル出てくる手品みたいに、次々と企画の構想が浮かんだ。
約900文字。
私はひたすらスマホのメモにアイデアを打ち込んだ。
楽しくて眠れなかった。

さやちゃんへの手紙の便箋の裏側に、『企画本屋honten』のアイデアをびっしり書き連ねた。
「さやちゃんは言葉が好きだし、私よりたくさんの本を知っているし、そんなさやちゃんが本屋の夢を叶えられないはずがない!」
私は彼女の可能性を心から信じていたんだと思う。

返事は間もなくして届いた。
思わしくない反応だったらどうしよう・・・ドキドキしながら手紙を読んだ。
「すごく面白そうです! 一緒にやってみたいです!」
やった! よかった!
私はガッツポーズをした。

こうして、二人目の店主が誕生したのだった。

後日、企画書を作り彼女に送った。
hontenの内容を理解してもらうためというのもあるが、それ以上にhontenへの想いを共有したかった。
目的の欄にはこう書いた。

・楽しいことしたい ← これが一番!
・お金が無くても、ノウハウが無くても、特別な能力が無くても、本業があっても、
 『本屋をやる』『自分の店を持つ』という夢は叶えられると伝えたい
・誰かの心地のいい居場所になる

さやちゃんと同じように、あるいは少し前までの私と同じように、『私なんて無理』『どうせダメ』とあきらめている人は少なくないと思う。
私はhontenを通して、無理じゃないんだと証明したい。
そうして、自分の可能性を信じられる人が増えたらいいなと思う。
どんな時でも、苦しい状況でも、必ず何か方法があるんだと伝えたい。

『夢』『叶う』『あきらめる』というようなワードが出ると、私はある人が頭に浮かぶ。
私はその人を「空想教室」という著書で知った。
尊敬する、という気持ちに実感を持てたのは、その人が初めてだった。

第4話「空想教室が教えてくれたこと」

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植松努さん。

北海道の工業用マグネット開発会社・植松電機の社長だ。
この会社、なんと宇宙ロケットも開発している。
講演会を聞きに行ったら、もっと植松さんのことが好きになった。

植松さんは子どもの頃から飛行機が大好きで、学校の勉強はそっちのけで飛行機の勉強にのめり込んだ。
しかし、親にも学校の先生や友達にも理解されなかった。

「お前なんかできるわけがない。」
「どうせ無理。」

そう言われて育ったのだそうだ。
そんな植松さんを救ったのは、唯一の理解者であった祖父と、本だったと言う。

植松さんは今、どうせ無理と散々言われ続けた宇宙ロケットの開発をしている。
『思うは招く』が植松さんの信念だ。
「どうせ無理、という言葉を世界からなくしたいんです。」
そう言って、植松さんは各所で講演活動を続けている。

私は、ことあるごとに「思うは招く」という植松さんの言葉を思い出す。
どうせ無理と思わないで、どうすればできるのか? を考える。
それは自分自身に対してだけではなく、周りの人に対してもそうだ。
植松さんの精神が私の中に確実に根付き生きていることを、hontenを通じて実感している。

企画書には『大切にしたいこと』という項目も作った。

① 楽しい

まずは店主自身が楽しいと思えることが重要だと思った。
私が思う『楽しい』は、『わくわくする』という意味もあるが、『ラク』という意味も含んでいる。
『ラク』というのは、頑張り過ぎない、無理しない、気楽にやる、とも言い換えられる。
どうやら頑張り過ぎる質らしい自分に対しての目標でもあった。

また、1歳年下という立場のさやちゃんが私を気遣い過ぎるあまり、彼女に無理が生じるのも防ぎたかった。
二人が楽しそうにしていれば、周りの人にもそれは伝わるはずだ。
逆に、楽しくない気持ちも伝わってしまう。そう思う。

② 優しい

私がもしお店を持つとしたら『優しい』空間にしたい、とかねがね思っていた。
誰かの居場所になれるような、居心地の良い店にしたかった。

優しさは必ずしも見返りがあるわけではない。
それは痛いほど、実体験として理解していた。
それでも。
性懲りもなく私は『優しいを配りたい』と思っていた。

ああ、もしかしたら。と私は思う。
もしかしたら、大学生の頃に見たあの映画が影響しているのかもしれない。


つづく



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