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“名もなき家事”と共に“名もなき仕事”の知名度よ、上がれ

「名もなき家事」なるものが世間に認知されてきた。

例えばそれは、
ゴミ出し=玄関先のゴミ袋を収集所に運ぶこと……ではなく、収集日の確認、分別の確認、各ゴミ箱のから回収、新しい袋のセッティング…と多岐にわたる!という主張からはじまったようだった。
そこからは、やれ水だしのお茶を飲みほしたままだの、トイレットペーパーやティッシュを補充しないだの、そんな不満が繰り広げられ、
しまいには

「家事を”手伝う”って何なの」とか
「言わないと動けない人なんだ」と一蹴される人たちをテレビやマンガで何度も見てきた。

最終的に『仕事(職場)だったらちゃんとできるのに、なんで家だと出来ないのか。』と思われてしまうまでがワンセット。

そういう論争を見る度 私は、
「そういう人は、職場でも大概かもしれない」
となんだか笑ってしまう。

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私は社会人歴丸6年のうち、8割くらいを事務員として過ごしている。

(▼事務員になる前の、10ヶ月の話はコチラ)


事務員。人事・総務・経理・営業補佐…職種はいろいろあれど、基本常に社内にいて、パソコンで仕事をする環境にあった。
そしてその環境は、いかなる職種であろうとあらゆる雑用・雑務をこなすポジションともいえる。

来客にお茶を出す、複合機の面倒をみる、郵便物や宅配を受け取って仕分け…などなど。

在宅勤務となった現在は環境が異なるが、当時は

『この職場で働く人は全員、複合機のトナー交換ができるか』

と思いながら働いていた。

この命題を掲げているのには、大学生のアルバイトで事務作業をしていたときのエピソードに由来する。

私がまだ働き始めて2週間、電話対応をしているとき、中堅社員が複合機で大量印刷をしていた。複合機のエラー音が鳴り、紙を補充したがようだがエラー音が鳴りやまない。インク残量のライトも正常。画面をみて、中堅社員が言う。

『うわ、トナー切れじゃん。』

そのタイミングで電話を終えたのだが、中堅社員はこちらにやってきて

『あ、コピー機、トナー切れだから、やっといて。』

「分かりました!すみません、まだトナー交換したことなくて。場所とかやり方教えてもらってもいいですか…?」

『え?僕?(苦笑)。トナー換えたことないからさぁ。誰かに聞いてみたら?』

そうしてそそくさと立ち去ってしまった。

分っている。きっとその人はもっと重要な仕事をたくさんしていて、アルバイトの私がやるのは当然のこと。「お前が換えろよ」などと思っているわけでは断じてない。
ただ「何故換えたことないことをちょっと自慢げに言えるのか…」と、不思議だった。

依頼される身としても、『悪いけど、換えといてほしい』と『自分はやり方分からないから、代わりに換えといてくれ』ではえらく印象が違うというもの。

そういえばその中堅社員、家ではけっこう家事をするって得意げだったっけ。ゴミ出ししたりしてるんだって(笑)

昔話はさておき、

一般的に「事務員の仕事内容」としてまとめられているものはなんだろう。
電話対応、来客対応、荷物・郵便の受け取り、FAXの振り分け、消耗品の管理・発注…
こんな感じだろうか。

私が今、思い浮かべる事務仕事は…
上記に追加してこんな感じだ
(※もちろん職場によって違うことは認める)

・誰かからのお土産を配布、空き箱の片づけ
・視察にきた上役のタクシー手配
・あるいは公共交通機関の時間を調べる
・複合機が不調になったら何とかする
・来客の人へのお茶出し
・そしてその食器洗い
・LANやコードがぐちゃっていたら整える
・退職した人が置いていったものの後始末
・入社してくる人のロッカー等の環境整備
・テプラで何かお望みのものを作る
・必須項目が書かれていない社内提出書類の催促
・あるいはその調査
・新しい書類棚や机が来たときの場所確保
・そしてレイアウトを考える

会社という組織で働き始めてすぐに気がついたのが、
「これって自分の仕事なの?」
と思ってしまうようなことが意外と溢れているということだ。それは、だいたい『名もなき仕事』の正体でもある。

……さて。
今回の記事で一番言いたかったことは何か。

事務員1年目のとき、教育係だった先輩に言われて今もお守りにしている言葉だ。

『私じゃなくても別にいいことは、誰もやりたがらないこと。でも、誰かが必ずやらなきゃいけないこと。』

もしその雑務に、少しでもモチベーションがあったなら、きっと仕事が楽になったり楽しくなったりするヒントが見つかるかもしれない。

今日も、『名もなき仕事』に心からの敬意を。
全ての事務員へ幸あれ…!!!

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