見出し画像

いかにもお母さんらしいね

金曜日に、お医者さんから

お母様のお迎えの時が
近づいているかも知れません
もしかしたら今晩か明日にでも

と、連絡があった。

土曜日に、遠く遠くから
母の兄弟が会いに来てくれることになっていて
間に合うかどうかも分からないほど
切迫しているような状況だった。

母は
しんどくてしんどくてたまらないだろうに
多分、皆んなが到着するのを待っていた。
朝の8時に弟さんが
午後の3時過ぎにお兄さんが
到着して

おーい、来たぞー!

と声をかけてくれると

母も、動けなくなった体を
精一杯使って
声をだした

指一本すら動かす力も出なくて
まぶたも閉じるのが難しい中で
一生懸命話そうとする

呼吸も飛び飛びで
時々止まっているのに
あー、あー、と
言葉にならないもどかしさと共に
発していた


翌日、日曜日
朝のぞきにいくと
母は昨日の夜と同じく
頑張っていた

時々無呼吸になりながら
また息を吸って
ハァーと声が出る
意識もうろうとしているように見えるけど
声をかけて
口の中を湿らせて
ホットタオルで顔をふき
ワセリンをくちびるに塗り
顔を保湿する

体とベッドの間に手を入れて
撫でる

熱が高いので
保冷剤をあちこちに入れてあるので
冷たいものと入れ替えて

看護師さんが朝一番に来て
下腹部の洗浄や
久しぶりの着替えをしてくれると
いやー、痛いー
というような声も出し
意識はある様子

処置が終わると
母の兄弟が到着

昨日、帰り際に
また明日、10時ごろくるからなー
と声をかけられていたので
お母さん
待っていたんだね

おじさんたちが来た途端
また声がたくさん出る

口も動かせないので
発音が難しく
うまく聞き取れないけど
多分

会いたい(離れた場所に座ったから顔を見たい)

と言っているように聞こえて

会いたいって言ってるよー
顔見て話したいんじゃない?

と伝えると
何となくウンウンと頷いたように見えた

おじさんたちに囲まれて
一生懸命話す

ありがとうって言いたいの?

と聞くと
またウンウンと頷く

手を取り合って
あー(ありがとう)
あー(ありがとう)
と繰り返す

おじさんたちが離れても
まだまだ話し続ける

分からない
分からないけど

お父さん、お父さんにも話したいんじゃない?

と呼ぶと

父が手を握って

どうしたー

と優しく声をかける

やっぱり同じように
あー、あー
と声を出す

ありがとうって言いたかったの?
お母さんもありがとう
みんな分かってるよ、大丈夫だよ

その後も
声が止まらない

あ!弟だ
「〇〇ー!(弟の名前)お母さん話したいみたいだよ!!」

弟も来て、母の頭を撫で
手を握る
こんなふうに母と向き合ったのは
初めてだろう
この時間が持てて良かった

子どもたち3人も
ばぁばと手を取り合って
ありがとうをした

写真も撮った

でもまだ声が止まらない

もどかしいね
言いたいこといっぱいあるよね
みんなと話したいね

お母さんの大好きなお菓子を
みんなにお土産に持っていってもらうよ
今からみんなに
お寿司を食べてもらうよ

と伝えると
ウンウンとまた頷く

そして
「はよいきゃー」
(方言です。早く行きなさいという意味)

とハッキリ言った 笑
私たちの事を心配しているのだ

お母さん!
本当に、最後の最後まで、お母さんらしいよ
心残りがいっぱいだろうし
病気はずっと辛かったし
色んなことがあったけど

今日のこの時間を過ごせて
良かったね

まだ声が止まらないので
父の兄夫婦にも来てもらった

来たよー
と声をかけてもらうと
分かっているようだった

お母さん
自分らしく生き切ったね

午後の訪問の際
看護師さんから

もうずっとなかった排便が少しあり
尿も全然出ていない
もうそろそろ
お迎えが近いかも

とは言われた

母は
最後の最後まで
ものすごく頑張った
頑張りたかったんだね
子どもたちにも
そんな姿を見せてくれて
子どもたちの心に
ばぁばの頑張りが響いているようだった

命の終わりを
しっかり見せてくれて
最後にみんなと手を取り合って
ありがとうってお別れを言って

お母さんらしいね

私も
しっかり生きていくよ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?