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医学生、神社に就職します⛩️(本気)

こんにちは!救急が好きな医学生、まっすーです!
いきなりで恐縮ですが、色々ありまして神社に巫女さんとして就職することになりました…!
もちろん国試は受けますし、そのうち医者キャリアに戻るつもりですし、この経験を医療に活かしたいと思っていることは先にお伝えしておきます。
今回はどのような思考、経緯でこの選択に至ったのか、未来の自分に向けての備忘録も兼ねてまとめておこうかと思います。(今回も長いです。約5,000字。すみません。)

※特に医師のキャリアという観点では意見が分かれるかもしれませんが、あくまで自分が出した結論です。
※具体的な神社名は直接お知り合いの方にのみお伝えします。
※下記は神道を学び実践する前、2023年8月時点での個人的な解釈です。
※もちろん所属組織を代表する発信ではございません。

自然と人の調和っていいよね

なぜ巫女さん?

実はずっと憧れていた

そうなんです、実はずっと巫女さんに憧れていたんです…笑
幼少期から近くの神社によく連れて行ってもらっていて、気付けば神社がとても身近な存在になっていました。何度もお神楽(下記注)に魅了されるうちに、なんとなく巫女さんへの憧れを持つようになりました。

「神楽」とは、祭典のときに神前に奉納される「歌舞(かぶ)(歌を伴う舞)」のことをいいます。

東京都神社庁

巫女助勤(バイト)での経験

大学1年生の頃から巫女助勤をさせていただき、実際に巫女さんをやってみて様々なことを感じました。
まず、基本的に神社では誰も悪いことを考えていないこと。授与所にいても、「この健康守は長生きしてほしいおじいちゃんにね。娘ちゃんはどれがいい?学業成就かな?」「毎年この御札をもらっていて、おかげ様で守ってもらってるよ。ありがたいことだねぇ。」など、皆が皆、誰かの幸せを願い、感謝しているんです。
客観的に見て、(事実かどうかは置いておいて、)幸せを願い、感謝することがこんなにも心の平穏に寄与しているのかと目の当たりにして驚いたし、日本において神社は市民の心の幸せにずっと寄り添ってきたんだと感銘を受けました。こんなに尊い場所はそうそうあるものではないと、何度も癒やされました笑

また、巫女さんのやりがいも感じました。お守りの相談を受けた時に、参拝者さんのニーズに寄り添ったお守りをお渡しできた時はこちらも嬉しい気持ちになります。
心構えとしてよくご指導いただくのが、「参拝者さんが気持ち良く参拝するお手伝いをする」ことです。私は、それすなわち「誰かの幸せを願い、感謝することで自分も幸せを感じる」ことのお手伝いであると解釈しています。こんなに意義深いことを現場でできるなんてっっっ!

巫女装束、カワイイネ

冷静でなくなる前にさっさとこの段落を閉じますが、
そんなこんなで大学5年生の頃に「卒業後、ギャップイヤー的に巫女さんできないかなぁ笑(まあ無理かなぁ)」くらいのことを思うようになりました。

踏み切ったきっかけ

5年生の頃は巫女さんは叶わぬ夢としか思っていませんでしたが、あるきっかけによって一気に現実的になりました。
2022年12月24日クリスマスイブの朝(笑)、とあるコミュニティで「人生を振り返る会」なるものに参加させていただき、一回り以上年齢が上の方々の超リアルなお悩みを聞かせていただく機会がありました(もちろん自分の悩みもシェアさせていただきました)。

「人生を振り返る会」のワタシ部分。月ごとの取り組みや反省などを振り返りました。
詳しくは恥ずかしいので見せられませーーーん!!

会の方々は人間として、キャリアとして、心から憧れていたり尊敬していたりする人ばかりでしたが、そのような方々が悩み、苦しみながらも歩みを進めておられる姿が非常に印象的でした。そこで、「人生は何歳になっても迷うものだから、だったら好きなことを全力でやろう」と思うようになりました。
私の好きなこと →→ 救急と、巫女。
「あれ???医師免許あったら医師はいつでもできるし、卒業後一旦は神社に就職するってまじで現実的に可能なのでは??もう一つの夢、叶うのでは??」
と思い、その頃から神社への就職一直線な思考になりました。

その後、相談した先輩方や同級生が背中を押してくださったこと、医師として就職したいと思っている病院の方々も応援してくださったこと、もしお祈りだった場合でも医者就活はなんとかなるタイミングだったこともあり、自然に申し込んで気付けば内定をいただいていました。

医療との対比が面白い

(日本で行わている西洋)医療と神道ってかなり対極的な概念体系だなと思います。
人間の体(自然現象)をコントロールしようとする医療と、自然の脅威を畏れながらも恵みに感謝し自然の中で生きることを体現する神道。物質的な機序を論理的に説明して病態解明や疾患治療(もしくは共存)を目指す医療と、感性を重要視し神を感じる神道。
一見、真逆の考え方をしているように感じます。
実際それぞれの世界にいる時、もう一方の概念体系との考え方の違いを色濃く感じる場面は多々あります。

しかし、両方とも「人の幸せ」を目指している点では同じだとも思います。
病気や治療という観点から人の幸せに寄与する医療と、心の支えになるという観点から人の幸せに寄与する神道。
人のケアに関しては対等に協力できるのではないかとも思います。
実際、国内外で宗教家が病院等で患者さんなどの心のケアを行う事例もあり、日本では「臨床宗教師」という資格もあるそうです。
(神道(生きる道の1つ)は宗教(教え)なのか、という点に関しては考える余地が残っているような気もしています。神道に教義・教典は無いですし。)

「臨床宗教師(interfaith chaplain)」とは、被災地や医療機関、福祉施設などの公共空間で心のケアを提供する宗教者です。「臨床宗教師」という言葉は、欧米の聖職者チャプレンに対応する日本語として、岡部健医師が2012年に提唱しました。「臨床宗教師」は、布教・伝道を目的とせずに、相手の価値観、人生観、信仰を尊重しながら、宗教者としての経験を活かして、苦悩や悲嘆を抱える人々に寄り添います。

日本臨床宗教師会 設立趣意書

医療現場における宗教家の活動の実態や効果などについては、国内外でも報告されています。

Peteet JR, Balboni MJ. Spirituality and religion in oncology. CA Cancer J Clin. 2013 Jul-Aug;63(4):280-9. doi: 10.3322/caac.21187. Epub 2013 Apr 26. PMID: 23625473.
Adams K.
Defining and Operationalizing Chaplain Presence: A Review. J Relig Health. 2019 Aug;58(4):1246-1258. doi: 10.1007/s10943-018-00746-x. PMID: 30565167.
村瀬正光, 医療現場における宗教者(チャプレン)の活動. 緩和ケア 22 (3), 225-228, 2012-05
谷山洋三, 医療施設における宗教的背景と宗教家の活動形態:質問紙による実態調査. 東北宗教学 16, 29-42, 2020-12-31. doi: 10.50974/00131065

両方の考え方を対比させながら深く学ぶことで、「人の幸せにどう寄与できるか」に関する価値評価軸を増やしたい。
神道×サイエンス。2つの対照的な概念の中で生きることで、自然や人間、社会といった複雑性の理解を、より納得しながら進められるような気がしています。

個人的な感情・信念

医者キャリアの道を外れるってどうなの?

はい、このご意見は必ず受け止めなければならないと思っています。
国の税金で医学部を卒業させてもらったのに、わざわざ道を外れるのはどうなのか?というところですね。
もちろんその環境には最大限の感謝をしています。そのうえで、現時点では「自分の場合はストレートでそのまま医者になるよりも巫女を経由する方が、長期的な目線でより良い医療への貢献ができると思う」というのが結論です。

もちろん、ストレートで医師としての研鑽を早く積んで、長く現場で活躍できるようにすることも大切(私も早く救急医療に参戦したい気持ちも大きいし、現場の先輩方へのリスペクトは無限大)です。
しかし、長期的には、神社で学んだことを医療に応用できる可能性も全然あるし、それは自分にしかできない医療への貢献の仕方の一つだと思います。
これは、例えば医師免許を持ってヘルスケア系ではない企業に務めておられる方や、医療からは一見遠そうな事業に関わっておられる方、生涯勤務年数という意味では再受験の医学生、浪人生や留年生にも同じことが言えるわけで。
医師としての活動で気付いた課題を別フィールドで解決する事業をされている方もおられますし、各々が各々の経験を活かして、より良い社会のために頑張るというのが良いのではないでしょうか。

「イメージ通りの医師」をしている年数は減りますが、その分良い貢献ができる期待値は上がると思っています。留学みたいなものかもしれません。
ただ、やってみないと結果はわからない部分も大きいので、信じる道を進むしか無いと思っています。

救急と神道の相性ってどうなの?

神道と医療のコラボを考える上で相性が良いのは、緩和ケア科、総合診療科など、慢性疾患に長く付き合い、人の生き方に真正面から向き合うような特徴を持つ診療科だと思います。
自分が医療として志す救急科は、近くはなさそうですね。
(3次救急や集中治療、ACP ( Advance Care Planning )やDNAR ( Do not attempt resuscitation )あたりは特に近い部分はあるとも思いますが!)
ですが、相性がいいものを好きでなければならないということはありません。自分は救急が好きで、神社も好き。なんかもう全部趣味かもしれませんが、その「好き」をそのまま大事にしたいし、そこから生まれる偶然を楽しみたいと思っています。
自分のために生きていれば長期的には結局それが一番社会のためになるはずだし、そういう意味で自分の観念を信じたいとも思っています(個人的な納得ですので、反論は認めます)。

「文化伝承を守ること」への理解を深めたい

今までの活動では、「当たり前を疑い、常に理想や改善を追求し、より良く変えていく」ことを重要視する文化にいました。医療のアップデートも激しすぎて、追いかけるのも難しい時もありますよね。
しかし(まだ少ししか知りませんが)、神道は伝えられてきた価値を変えず守り、伝承すること自体が大きな価値として扱われている文化です。
日本から神社がなくなってしまったら、心のどこかで悲しく思うような気がしませんか。日常にどれほど溶け込んでいるかは個人差が大きいですが、根本的なところでは、そのように守られ受け継がれてきたものに日本・日本人が支えられている部分は大きいと感じています(文化面、観光面、経済面でも)。
そういう意味で、今までとは違った価値体系をインストールしてみたい、「文化伝承を守ること」への理解を深めたいと思っています。

おわりに

神道に対する解釈や想いをつらつらと述べさせていただきましたが、とにかく神社に就職することが楽しみで仕方がないんです笑
自分のキャリアを愛せる自信しかありません
救急のことを考えたり話したりしていると、早く参戦したいとも思いますが…。

あと、神職さん兼医師、もしくはお坊さん兼医師は少数ですがいらっしゃいますが、(正社員の)巫女→医師をされた前例を見つけられていません(見つかる気もしていません笑)。
もしそういう方がいらっしゃれば、ぜひともご紹介いただけますと幸いです。

現時点では上記の考えですが、巫女さんを実際にやった後にどのようにアップデートされるのかが楽しみです。神道や医療に関する疑問があれば、私の思考も深まると思うので、ぜひ教えてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

最後になりましたが、今までもこれからもお世話になる神社の方々、思考の転換点を与えてくださった「人生を振り返る会」の方々、相談に乗ってくださった方々、応援してくださった方々、校正・校閲いただいた方々に心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

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