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2020年12月

わたしのいのちが、街角に捨てられる。
そう言っても、あなたはみんな同じと嗤うだろう。
そのみんなの中に、あなたのわたしは入っていない。

記憶の中の夜は、秘密基地だった。
本のページはどこまでも深く、イヤホンを伝う音楽は翼になった。
なのに、うなされて出会う今は、何も見えないアウシュビッツ。
解放軍は来ず、博物館の出口もない。
わたしという物質は、痛みと苦しみを予習する。
「いまできることを、精一杯やって」
羊のように繰り返す標語は、闇に跳ね返って、檻の中に積もる。

どれだけ身を粉にして働いても、最期は自己満足が泡と消えるだけなのさ。
わたしの自己満足を、あなたは身勝手と破り捨てる。
みんな同じだから、不満なんか口にしないで、我慢して、耐えて、耐えられなかったら仕方ないね、仕方ないよね。
今日は寒いね、の声で。
どうせ人間はいつか死ぬんだから。

歴史に消えていく奴隷は、教科書の活字上に存在していると。
数で語られる死は、移り行くデータに過ぎないと。
わたしだけは大丈夫っていうあなたの自信は、何を踏んでいる。

文学と芸術に喝采を。
わたしの愛する人たちに祝福を。
がんばっている見知らぬあなたに声援を。
生きている間にできることなんて、絶望と感謝のミルフィーユでしかない。

また、夜が来る。

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