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新書って男性ビジネスマンの読むものですか?

読書が好きで、知りたいことをどんどん調べていこうとすると、新書にぶち当たることがよくあります。
なにしろ安いし。
できれば文庫で読みたいけれど、初心者向けの内容って、新書が多かったりしますしね。
それでまあ、いろいろ手に取るんですけど、明らかに男性ビジネスマンをターゲット層にしてるでしょ? っていうのが見え見えの内容なものも多々あり、残念な気持ちになるんですよね。

この本も、そんな本に思えました。
『[新装版]アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』。


なんだかなあ、この表紙。猿人から進化してなるのが、ビジネスマンなわけ?
女性とか、職人とか、クリエイターとか、スーツを着て黒い鞄を持たない人々も、普通にいますよね?
記号としての現生人類が、ビジネスマンで悪いとは言いませんが、やっぱり記号認識はそうなんだ~、と思っちゃいます。
そしてそれは著者のせいというより、出版社だったり、編集部だったり、カバーイラスト制作会社だったり、それらの人たちの考えるターゲット層が、男性ビジネスマンなんだろうなあ。
ターゲット層をきちんと設定すれば、ターゲット層外の顧客もついてくる、ってどこかのビジネス書で目にしましたけどね。どうなんですかね。

この本の内容自体は、著者が形質人類学の専門家だけあって、そちらの方向に傾いてはいますが、とても読みやすいと思われます。
ただ、古の人類史の初心者向けは『絶滅の人類史』の方かも……という気もします。

あ、私が今年読んだ本の中で……ですけどね。

『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』は、2011年に7万部となったベストセラーで(注:『鬼滅の刃』と比べないで下さい!)、2020年にその新装版が出たんですね。
この10年の間に、人類史の研究は大きく進歩したので、それらについてもこの本の中で触れられています。

人類の進化は、これまで形態学の独壇場でしたが、そこにDNA解読が加わってきたんですね。
個人的には両方の視点からの研究成果を知りたいので、やっぱり多角的な研究は重要だと思います。
我々がどうやって日本人になってきたかも、DNAで詳しく知りたい!

この本は、いわゆる人類史の説明だけじゃなくて、人類がどういうルートを通って日本にやってきたかも記述されています。
縄文人が南方ルート、弥生人が北方ルート。
それはどこかで耳にしたことがあることでしたが、ああ、やっぱりという感じで。
早いか遅いかの違いだけで、我々は全員渡来人の子孫なんですよねえ。

というように普通に読める本なんですけど。
一点、やっぱりいただけない部分があって。
人類に粘膜のある唇があったり、女性の乳房が膨らんでいたりする理由……という記述があって、それがちょっと男性目線でしかないのが、非常に気持ち悪いです。
それどういう記述って、今ここで詳細を書いて、知らない男性陣が読んで「へえ~」って思われたりしたら気持ち悪いから、書きかけた文章を全削除したくらい、その「へえ~」な感覚で、街中に出られたくないから、この際わかりにくくてもええわと思うくらい、ああ腹が立つ。

出版物のターゲット層は、全人類! であるべきだと思うんですよ。
それぐらい、発言には注意を払わなきゃいけない時代になっている。
ペンは剣よりも強しというくらい、言葉には力があります。
力を持つものは、その力を使う重みと責任を、常に自覚し続けなければならない。私のかつての武道の師匠の教えです。

この本は、骨の見分け方についても、とてもわかりやすく書かれているので、とてもおしいんですが。
うまくいきませんね。

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