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誰が、六条の御息所を生き霊にした?

 またしてもお久しぶりの更新となりました。
 源氏物語日記。
 今回は、
『葵の上の出産と死』(葵)
 です。

 この節で、源氏の君の正妻である葵の上が、
物語から退場します。
 六条の御息所という生き霊によって。
 一体、誰が彼女を生き霊にしたのか?
 葵の上か? 
 女の嫉妬心からくる自業自得か?
 それとも――
 
 あの祭見物の事件後、葵の上には物の怪がいくつもついてしまい、夫である源氏の君も妻のために、加持祈祷をさせます。
 その過程で、葵の上には、物の怪だけではなく、生き霊もついていることが判明する。

 物の怪だけではなく、生き霊まで……。
 葵の上は自ら問題を起こすタイプではないので(周りは別として)、この生き霊の多さは、それだけ彼女の夫である源氏の君と関係のある女性たちから嫉妬されていた、ということの表れなのかもしれない。

 最近、大河ドラマの関係で『源氏物語』関連書が増えてきたので、もっと作品について知りたいなぁ。
 令和を生きる人間が紐解く、または案内してくれる『源氏物語』の魅力を存分に味わいたい。

 話が脱線してしまいましたね。
 戻します。

 死霊や生き霊、物の怪などを退散させる法力のある修験者が、弟子のよりまし(霊を憑依させる女性)に憑いた生き霊たちに、次々と正体を名乗らせていきますが、ひとつだけ名乗らない生き霊がいます。
 その生き霊は、よりましには憑かずに、葵の上にぴったりとくっついて激しく苦しめます。
 葵の上の女房たちは「あの生き霊の正体、六条の御息所か、二条にいる女君(若紫)じゃない?」と噂します。

 苦しくもだえる葵の上。義父である桐壺院からの見舞いもあり、「世の中の人すべてが」葵の上を心配している。
 そのことが、まさに生き霊の正体である六条の御息所のかんにさわってくる。

 この「世の中の人すべてが」ってすごいな、と思う。それほど世間から心配されているという比喩なのだろうが、それにしても「世の中の人すべてが」……これは六条の御息所の主観も入っているのかもしれない。

 物語が進むにつれて、六条の御息所はどんどん思い詰めていってしまう。『車争い』の件もあり、彼女のプライドはズタズタ。
 都を離れたいのに、源氏の君からは
「私を見限るのか。愛し合ったからには、最後まで愛し通すのが本物の愛情でしょ?」と、なんともまあ、あいまいなことを言われる。
 すっかり見限っている(飽きている)のは、お前のほうだろうがー!! と怒り心頭だが、やはり一度愛した男からの言葉に六条の御息所の心は揺れます。
 建前とわかっていても、「もしかしたら……」とすがってしまうのが女心というか、人の心。

「でも、あいつ(源氏の君)の奥さん、今、妊娠中!!」

 という現実にも打ちのめされる。
 無意識に生き霊となってしまったのも納得です。
 葵の上からすると、大変に迷惑な話ですが。

 子供の頃に読んでいたときは、「六条の御息所、こわっ!」となりましたが、大人になって読み返すと、彼女に同情してしまう。

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