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[本のおはなしvol.11 ] 「はるとあき」

1週あいて、久しぶりの「本のおはなし」
連休明けで二人とも少々ぼんやり。リズムがなかなか戻りません!

前回のおべんとうスペシャルではまだまだ「春」の話をしていましたが、連休の間に「夏」の気配もちらほら。そんな今日の絵本は『はるとあき』

本屋さんでジャケ買いした『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』で詩人の斉藤倫さんを知りました。(同名の漫画家さんもいますね。別マで読んでたなぁ…)タイトルも、高野文子さんの画も最高…!
斉藤倫作品、まだ全部は読めてはいませんが、何を読んでも優しくて豊か。他の作品も今後ご紹介していきたい!

『はるとあき』は絵本とはいえ5歳〜小学生向け、いやはや大人にもおすすめしたい作品!!
「はる」と「あき」は擬人化された季節の「春」と「秋」のこと。
「ふゆ」と交代した「はる」は、「なつ」にバトンを渡すときに「わたしは あきに あったことが ない」と気づきます。そして「そうだ あきに てがみを かこう」と思いつく。そこから始まる、はるとあきのお手紙交換のおはなし。

春と秋はどうしたって会えない。少し悲しいけれども、ほんわかと暖かい気持ちになるのは優しい余白のある文章と、かわいい絵のおかげでしょうか。そう、この絵がまた「かわいい」だけではなくて…少々影があるというか、ピカピカのかわいさとは違う、文章とちょうどよく混ざり合って、少し苦くて甘い、夜のココアみたいな優しさ。
春って「ワクワク・桜・ピンク・いつもニコニコあったかい」そんな風に刷り込まれている気がします。この「はる」にもそんな春の要素はありますが、どこか自信がなかったり。不安、悲しみ、怒り…ささやかなものでも表に出すのはいけないかも、こんなわたしじゃダメかもなんてちょっと蓋をしたくなってしまうけれど、「はる」と「読み手」に寄り添ってくれる言葉たちから「そのままでいいんだよ」というような、安心感をもらいます。

蓋をしたくなっちゃう感情についてはなしている中で(私たち、割とこういう話をちょいちょいしている気がするなぁ)扇谷さんから出てきたのはピクサーの映画『インサイド・ヘッド』

ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミの5つの感情それぞれがキャラクターとなって、11歳の女の子ライリーの頭の中の司令室に集まり、いつもライリーが幸せでいられるようにと奮闘するお話です。

それぞれの感情が活躍しながら、ライリーに行動を促していくのですが、5つの感情の中でも、カナシミは、自信がなくネガティブな性格で、周りのムードも暗くしてしまう厄介な存在と思われていましたが、物語の最後には、カナシミの存在によってみんなが救われる。
蓋をしたいようなネガティブな感情も排除するのではなく、その存在を認めて、共に歩んでいくことによって心のバランスがとれる。どんな感情も自分にとって大切なもの。そんなことを教えてくれる映画です。

『はるとあき』に話はもどり…
わたしなんか…と少し自信をなくしていくはる、でもあきも同じように少し寂しさを感じていて。そんな二人をなつとふゆ(裏表紙に二人もいる!)は笑い飛ばします「あなたたち そっくりよ あつすぎないし さむすぎなくて とても やさしい きせつ」
はるとあきに手紙を届けるなつとふゆ、こちらのふたりの話も読んでみたいなぁ。

リアルで人と会うことが難しくなってしまった今、敢えてアナログなお手紙もいいかもしれない。手紙を書く時間、ポストに入れてから届くまでの時間、そしてお返事を待つ時間。久しぶりに、お手紙書いてみようかな。

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ここからは、今週の子守唄
はるとあきの気持ちのやりとりに使われる「手紙」をキーワードに選んでみました。古今東西「手紙」をテーマにした歌はたくさんありますね。しっとりしすぎず、かわいさもあって、でもちょっとせつない。そんな手紙の歌と言えば、「Please Mr.Postman」が浮かびました。

「Please Mr.Postman」は様々なアーティストによってカバーされている曲です。私は、中学生の時にカーペンターズバージョンで聴いて以来、ずっとそれがオリジナルだと思っていたのですが、今回調べてみたら1961年にモータウンレーベルのコーラスグループ、マーヴェレッツによって歌われたのが最初とのこと。確かにこのコーラスワークはモータウンの感じだなあと改めて思った次第です。

↑Please Mr. Postman ー  The Marvelettes
このテンポの感じも素敵です。

↑Please Mr. Postman ー  The BEATLES
歌詞のHeがSheになっている感じも良いですね。

↑Please Mr. Postman ー  The Carpenters
カーペンターズバージョン。歌詞カードとにらめっこしつつ聴いたなあ、間奏のサックスのソロも本当に良いよね。と、ついつい聴いた当時を振り返り遠い目になってしまう一曲です。

5/13のおはなしは扇谷一穂選書で「つきよのキャベツくん」
全5冊出版されている「キャベツくん」シリーズ 中の「つきよのキャベツくん」を中心にお届けします。


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