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ゲリラをわずか数年で半壊させたLOVE攻撃

以前、コロンビアにはFARC(コロンビア革命軍)というゲリラ組織がありました。構成員は数万人。

それまでコロンビアはゲリラとの戦争が50年以上続き、約23万人が犠牲になっていました。50年とは人生のほとんどを意味し、一世代が平和を知らないまま育ちました。これは平和な日本に住む私たちからすると想像を絶します。

「自分が生きていた時間のほとんどが戦争」だったのです。

しかし今、FARCは存在しません。

2017年に、FARCは数千もの武器を政府に引き渡し、拠点のジャングルに最後まで残っていたゲリラ兵たちも、そこを去り、FARCとの戦争は終わりました。

当時、ゲリラ壊滅LOVE作戦(私の造語です)が行われるきっかけを作った、同国の防衛大臣ファン・マヌエル・サントスは2010年に大統領に就任し、2016年にはノーベル平和賞を受賞しました。

2017年にFARCが存在しなくなった時、サントス大統領は次のように宣言しました。

「今日は特別な日だ。武器が言葉に変わる日である。」

。。。

なぜ、50年も続いたFARCとの戦争が、それまでを考えるとわずかな時間で、終わったのか?終わらせられたのか?その秘密は、

「ゲリラ壊滅LOVE作戦」

にあります。

普通、ゲリラとの戦争はまさに、暴力と暴力の応酬です。

しかし、50年も続くゲリラとの戦争を経験していたコロンビア政府はわかっていました。「この戦争を力ずくで終わらせるのは不可能だ」と。

そこで当時の防衛大臣だったファン・マヌエル・サントスは、世界最大級の『広告企業』マレンロウのコロンビア支社で働いていた、カルロス・ロドリゲスとファン・パブロ・ガルシアに、次のように依頼しました。

「ゲリラとの戦争を“広告戦略”によって、支援して欲しい」

そして生まれたのが『ゲリラ壊滅LOVE作戦』です。暴力によって力ずくで相手をひれ伏させるのではなく、『広告戦略によって』ゲリラ兵たちをFARCから脱退させる、という作戦です。

ロドリゲスとガルシアは(通常の広告戦略と同様に、ターゲットである)FRACを脱退した元ゲリラ兵にインタビューを行いました。それを繰り返すうちにわかったことがありました。それは、

「ゲリラ兵たちも普通の人間」

だということです。ゲリラ兵というと冷酷で戦闘的な人間だと思いがちです。しかし、そうではなく、ゲリラ兵も血が通っていて、私たちと同じような、欲求、願望、夢を抱いていることが分かりました。冷酷な人間兵器だと思っていたゲリラ兵たちは、いたって普通の、私たちと同じ『人間』だということがわかったのです。

そして彼らはゲリラ兵を(広告的に)攻撃する最初の作戦を思いつきました。それも驚愕の作戦です。それは、

「FARCの拠点であるジャングルにクリスマスツリーを立てる」

という作戦です。

作戦は夜に決行されました。映画さながらに、軍用ヘリコプター二機に乗り込んだ屈強な特殊部隊の隊員たちは、FARCが支配するジャングルに降り立ちました。彼らの作戦は相手を撃ち殺すことではなく『ジャングルにクリスマスツリーを立てること』です。

闇夜にまぎれて彼らは、適当な高さの木を見つけ出し、そこに2000個ものLEDライトとメッセージつきの垂れ幕を飾りました。ライトには人感センサーがついていて、そばを人が通るとライトが点灯し、取り付けた垂れ幕のメッセージが浮かび上がります。メッセージ内容は、

「ジャングにもクリスマスがやってくるのだから、あなたも家へ帰るといい。脱退しよう。クリスマスにはすべてが許される。」

というものでした。

この作戦は圧倒的な成功を収めました。ジャングルにクリスマスツリーを立ててから、わずか1ヶ月のうちに『331名のゲリラ兵がFARCから脱退』しました。

脱退したゲリラ兵に「なぜ脱退したのか?」と聞くと「クリスマスツリーを見たからだ」と言います。また、別の脱退したゲリラ兵はこうも言いました。

「指揮官は怒らなかった。ツリーはこれまでに見たプロパガンダとは違っていた。指揮官も感動していた。」

ロドリゲスとガルシアは、通常の広告戦略と同様に、広告を出しては(まずはジャングルにクリスマスツリーを立てる)、その結果を検証し、より有効な広告戦略(ゲリラ兵を脱退させる方法)を考え出し、実行していきました。

それらも続々と成功をおさめ、『ゲリラ兵を壊滅させる広告戦略』をはじめてから、「たったの数年でFARCの構成は2万人から半分以下」になったのです。

その後にコロンビア政府はFARCと和平交渉を開始し、晴れて2017年にFARCは完全に解体されることとなりました。

戦争は暴力と暴力の戦いだと思いがちですが、そうではなく、このように『愛』に訴えることで、それを終わらせられる大きな可能性があると感じました。

通常の戦争では、勝った方が敵の兵士を虐待したり、処刑したりすることがありますが、今回のコロンビア政府vsFARCでは、コロンビア政府は脱退したゲリラ兵に恩赦を与え、トレーニングを与え、仕事を与えました。

長く続いたFARCとの戦争は終わり、形としては政府が勝ちましたが、そこに敗者はいなく、政府、ゲリラ兵ともに『勝った』戦争だったと、感じました。

この話は、ルドガー・ブレグルマン著「Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章(下)」に載っています。上下巻ありますが、どちらもめちゃくちゃ面白いので超絶オススメです。気になったら読んでみてくださいね。

ではでは、ありがとうございました。

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