見出し画像

【恵林寺庭園】夢窓国師が“無為自然の境地”を表現した名園(山梨県甲州市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき 2021年4月号「名勝アルバム」より)

 恵林寺(えりんじ)は禅僧・夢窓国師(むそうこくし)が1330年(元徳2年)に開創。武田信玄の菩提寺としても知られる。本堂裏に広がる恵林寺庭園は、上段に枯山水、下段に心字池(しんじいけ)*を配した池泉庭園で、池には笛吹川(ふえふきがわ)の清水を引き込む。

*1 「心」の字をかたどった池

2104_名勝D01**

 石組や雌雄の滝、力強い緑の木々……縁側から鑑賞する庭は、眺める位置によって表情が変わり見飽きない。子細に玩味するうち、自ずと心が整うようにも感じられた。恵林寺の事務長・関根弘嗣さん曰く「無為自然の境地を表現した庭園だからでしょうか」。そもそもは坐禅用に設計されたという説もあり、造園当時は、はるかに乾徳山(けんとくさん)*を望む借景の庭だったという。

*2 夢窓国師が坐禅修行をしたと伝わる山

 1582年4月(天正10年3月)、武田氏が織田信長に滅ぼされ、当寺も焼き討ちに遭う。そのわずか数カ月後、天下統一を目前に信長もまた、本能寺の変により炎の中で自害――春うらら、揺らめく枝垂れ桜や滝の音を浴しながら、しばし無常の世に思いを馳せた。

文=神田綾子 写真=阪口 克

◉名勝指定 
1944年(昭和19年)6月26日 
山梨県甲州市塩山小屋敷2280 
☎0553-33-3011
[時]8時30分〜16時30分 [休]無休
[料]大人500円ほか(拝観料)
https://erinji.jp/
境内には武田氏ゆかりの美術工芸品や武具甲冑、古文書などを展示する信玄公宝物館もある([料]大人500円ほか [休]12〜3月の木曜)。信玄の命日4月12日には毎年供養が行われる。墓所は通常非公開で、月命日のみ公開。

出典:ひととき2021年4月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。




よろしければサポートをお願いします。今後のコンテンツ作りに使わせていただきます。