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【郭怡美書店】時代の最先端をいく台湾書店の旗手|『増補版 台北・歴史建築探訪』より(10)

台湾在住作家である片倉佳史氏が、台北市内に残る日本統治時代の建築物を20年ほどかけて取材・撮影してきた渾身作『台北・歴史建築探訪』。このほど発刊される増補版では、初版の171件に加えてコロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど40件が追加されています。この連載では、『増補版 台北・歴史建築探訪』より一部を転載し、ご紹介致します。

増補版 台北・歴史建築探訪』(片倉佳史 著/ウェッジ)

 かつての永楽町えいらくちょう通り(現・迪化街)は大稲埕だいとうていの繁栄を象徴する家並みとして知られていた。この辺りの家屋は「町屋」に似たスタイルで、正面が商店、奥まった場所に住居や倉庫を設けることが多かった。間には中庭が設けられ、作業場として使用された。この建物については、迪化街に面した正面部分が郭怡美書店、中庭を挟んで、奥が「AKA café」となっている。

中庭には空中に階段が渡されており、前衛的なデザインとなっている。

 永楽町通りに面した家屋は「郭怡美商行」だった。1896(明治29)年に創業し、食品の売買で財を成した。なお、永楽町通りは南側を南街、北側を北街、この辺りは中街と呼ばれていた。

 2022年11月に書店として息を吹き返し、現在は大稲埕の文化を発信する空間として親しまれている。3階は台湾の伝統家屋をイメージしたインテリアとなっており、赤煉瓦や木目の色彩が落ち着きを演出している。なお、建物全体の照明は「瓦豆」の江佶洋氏が担当している。

建築美に触れながら、多くの刊行物を手にできる。翻訳書籍や写真集なども充実している。

 また、店内にはカフェを設け、語らいの場として機能させるだけでなく、随所に椅子やソファーが置かれ、書に親しむことができる。また、企画展や新刊発表会といったイベントにも力を入れている。

店内の雰囲気に触れることを目的にやってくるファンも多い。
店の奥にある中庭の先には郭家の住居があり、現在は「AKA café」となっている。

文・写真=片倉佳史

──今回発刊された増補版では、コロナ禍でリノベーションしたレストランやカフェなど、実際に訪れたくなる約40件を新たに追加して計211件が掲載されています。美しい建築写真をご覧になり、日本人と台湾人がともに暮らした半世紀を振り返れば、きっとまた台湾を旅したくなるはずです。ぜひお楽しみください。

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片倉 佳史 (かたくら・よしふみ)
1969年生まれ。早稲田大学教育学部卒業。武蔵野大学客員教授。台湾を学ぶ会(臺灣研究倶楽部)代表。台湾に残る日本統治時代の遺構を探し歩き、記録。講演活動も行なっている。妻である真理氏との共著『台湾探見 ちょっぴりディープに台湾体験』『台湾旅人地図帳』も好評。
●ウェブサイト「台湾特捜百貨店

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