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さだまさし「小さな人生を懸命に生きる人へのエール」――『日本人よ、かくあれ』

歌手のさだまさしさんが、弊社の新刊書籍『日本人よ、かくあれ――大和の森から贈る48の幸せの見つけ方』(岡本彰夫 著、保山耕一 写真)の書評をお寄せくださいましたので、ご紹介いたします。

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 『上へ上へではなく、奥へ奥へと進みなさい』

 僕は岡本彰夫先生に10年以上に亘って深いお付き合いをお許しいただいていますが、岡本先生の言葉は、たとえ厳しくとも常に「情」と「心の奥行き」に満ちています。

 「情」とは人間同士の心にとって、最も温かな潤滑油であり「心の奥行き」は、他も我も共に幸せにしてくれる「優しさ」の別の呼び名です。

 本書『日本人よ、かくあれ』には日本人が生きるために大切な「備えと構え」がわかりやすく語られていて、平和呆けで弛緩し切った日本人への重要な警鐘という側面を持っています。

 命懸けで奈良を撮り続けてこられた映像作家・保山耕一さんの素晴らしい作品が岡本先生の言葉にぴたりと寄り添って、高い品格に満たされた本書を是非とも日本人全員にお読みいただきたいと思います。弱者への慈しみと強者への戒めなど「箴言」に満ちた名著です。

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 岡本先生の柔らかな語り口で市井に生きるささやかな人々の、生活を通した心の豊かさが温かなエピソードと共に描かれていますが、偉大な人は市井に潜んでいる、ということが、実はこの国の文化の奥行きなのだと気づかされます。

究極の日本の「魂」

 また、懸命に一途に己の道を歩んで生きた人のみが到達できる境地「矜恃」の深み凄みこそが究極の日本の「魂」だと教わります。『みかえりのない心、計算の無い心で徳を積めば、必ず運は開けてくるんや』という言葉には、永年春日大社にお勤めになった名神主の岡本先生らしい、宗教家としての「祈り」と小さな人生を懸命に生きる人への「エール」を感じて嬉しくなります。

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 現代社会を生きる人間の思い上がりに対する解りやすい諭しが『八割の幸せを享受することに全員が納得しない限り地球は滅ぶに違いない』であり『土を捨て土を汚す現代人は土にひれ伏さねばならん』という言葉に、謙虚に生きる為の心構えの基本が示されています。

 僕のように長い間歌づくりをしてきた者にとっては『日本語は調べを大切にしたいものだ』という言葉に改めて覚悟を教わり、同時に背中を押されます。47年間もコンサートで日本中を旅をしてきた僕にとって「旅」とは人生そのものなのですが『神は旅をされる、つまり旅は”神事”である』という言葉によって強い勇気を頂きました。このような慈愛に満ちた言葉の数々に感謝します。

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 それから、母を亡くして4年が経つ今になって『乳房のむくい』はぐっと胸に染みてきます。これほど幾度も幾度も深く頷きながら読んだ本は人生で初めてです。どうぞ幾度も幾度も頷きながら繰り返しお読み下さい。きっと沢山の「気づき」に出会えることでしょう。

文=さだまさし 写真=保山耕一

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さだまさし(シンガー・ソングライター、小説家)
長崎市出身。'73年フォークデュオ・グレープとしてデビュー。'76年ソロ・シンガーとして活動を開始。「関白宣言」「北の国から」など数々のヒット曲を生み出す。通算4400回を越えるコンサートのかたわら、小説家としても「解夏」「風に立つライオン」などを発表。多くの作品が映画化、テレビドラマ化されている。またNHK「今夜も生でさだまさし」のパーソナリティとしても人気を博している。2015年8月、一般財団法人 風に立つライオン基金を設立(2017年7月、公益法人として認定)。様々な助成事業や被災地支援事業を行っている。2020年5月20日、グレープ時代から通算46枚目のオリジナルアルバム『存在理由〜Raison d'être〜』を、7月1日『コンサートツアー2019~新自分風土記〜』ライブ映像作品3形態をリリース。全国ツアーも決定している。

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