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【ただにしき】不二聖心女子学院が富士山麓で育む「幻の紅茶」(静岡県裾野市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき 2018年6月号より)

 富士山を望む裾野市に、幻といわれる国産紅茶を産する茶畑がある。不二聖心(ふじせいしん)女子学院のキャンパスの一角にある不二農園だ。寄宿舎を有するカトリックの女子校直営というユニークな不二農園の歴史は古く、明治初期にさかのぼる。

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毎年5月には中学生が茶摘みの体験学習を行う
不二聖心女子学院=写真提供

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製茶工場前で不二農園製茶部の人々(昭和初期)
不二聖心女子学院=写真提供

 不二農園という名になったのは大正初期のこと。さらに昭和20年(1945)、農園は聖心に寄付され、歴史ある茶畑はキャンパスに残されることになった。約一万坪の広大な農園でとれる茶葉からは、緑茶、ほうじ茶、紅茶が生産されている。なかでも「ただにしき」はこの農園自慢の茶木だ。明治初期、政府の役人だった多田元吉が中国、インド各地を視察した際に持ち帰った茶種子を、静岡県茶業研究会(当時)が改良育成した紅茶用品種である。昭和40年頃までは各地で栽培されていたが、輸入紅茶におされ、現在ではほとんど栽培されていない。

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 「ただにしきは、不二農園でいちばん日当たりのいい場所で育てています。ここまでまとまった形で栽培しているのは当園だけと聞いています。大切に育てていきたいですね」

 そう語るのは学院の事務で、農園の管理にもあたる勝又幸治さん。渋みや苦味が少なく、まろやかな味わいと甘い香りは、ストレートで飲むとより際立つ。日本の風土で育った紅茶だけに、日本の水にも、和菓子にもよく合う。勝又さんは、モーニング・ティーで飲むのがお気に入りだそうだ。

 「生徒たちは、中学の3年間で茶摘みを体験します。卒業生が、ただにしきの紅茶とお菓子を持ち寄ってお茶会を開くことも。大切な思い出の味になっているようです」と広報担当の鈴木暁子先生が教えてくれた。

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「ただにしき」を使った焼き菓子、ぱんはうすヴィエナ・ブロートの「ソフィアージュⓇギフトボックス」の一例

 富士山の名の由来に、二つとない「不二」とする説がある。富士山の麓で育つただにしきは、まさに不二なる紅茶だった。

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橋本裕子=文  佐藤佳穂=写真

ご当地◉Information
●裾野市のプロフィール
静岡県東部、富士山の南東麓に位置し、東に箱根外輪〈がいりん〉山、西に愛鷹〈あしたか〉連山を仰ぐ自然豊かな市。「世界遺産 富士山」の構成資産である国指定史跡の「須山浅間〈せんげん〉神社」や「須山口登山道」で知られる。また「聖心の紅茶ただにしき」のほか市内で生産され、地域の素材などが活かされた特産品には、優良地域ブランドの証しとして「すそのブランド」認定をしている。

●裾野市へのアクセス
東海道新幹線三島駅から東海道本線で沼津駅へ、御殿場線に乗り換え裾野駅下車

●問い合わせ先
不二農園 ☎055-992-0213
https://www.seishin-fujinouen.jp/
ぱんはうすヴィエナ・ブロート ☎055-993-9285
https://bit.ly/2A1OsYH

出典:「ひととき」2018年6月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。



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