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【寝覚の床】木曽川の急流が作った巨大な奇岩の景勝地(長野県木曽郡上松町)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき2020年5月号「名勝アルバム」より)

 巨大な箱のような奇岩、青みがかった清涼な水の流れ、川面を吹き渡る穏やかな風……木曽川の急流に長年浸食されてできた「寝覚の床」は、木曽八景の一つに数えられ、長野県歌「信濃の国」にもうたわれる景勝地だ。

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 当地屈指の観光スポットだが、上松町観光協会の松原和恵さんが「小学校時代、遠足や図工の写生で訪れたことを憶えています。今の小学生も、きっと一度は学校行事で行くはずです」と教えてくれたように、地元の人にとっても馴染み深い大切な景観である。

 この地には、諸国を旅した浦島太郎が晩年気に入って住み着き、ここで玉手箱を開けて夢から覚めたことからその名がついた、という伝説が残る。「寝覚の床」の中央部から仰ぎ見れば、浦島太郎が残したとされる弁財天像を祀る、小さな堂宇に気づくだろう。

 巨岩の上に立って爽やかな新緑と川の音に身を委ねていたら、心地よさのあまり、時がひと際ゆっくりと流れていくように思われた。

山本典義=写真

◉名勝指定 1923年(大正12年)3月7日
長野県木曽郡上松町上松 電話:上松町観光協会0264-52-1133

寝覚の床は眺望スポットによってさまざまな表情を見せる。渓谷沿いに建つ臨川寺〈りんせんじ〉からは全体が一望でき(拝観料200円)、3本ある遊歩道を使えばメインエリアの近くまで下りることができる。無料の町営駐車場を利用し、森林を散策しながら向かうコースもおすすめ。

出典:「ひととき」2020年5月号


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