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【醒井峡谷】琵琶湖国定公園・霊仙山を仰ぐ 静かなる清流の里(滋賀県米原市)

「名勝」とは、日本における文化財の種類の一つ。本連載では国指定名勝の庭園、峡谷、海浜、瀑布などを、臨場感あふれる撮りおろし写真で紹介します。旅に出たような気分で、日本の美しい景勝地の数々をお楽しみください。(ひととき2018年6月号「名勝アルバム」より)

 琵琶湖国定公園・霊仙山(りょうぜんざん)の伏流水が湧き出し、川となった宗谷(そうや)川が流れる醒井(さめがい)峡谷。輝くばかりの新緑の樹々の間からやわらかな陽光が差し、そこかしこに白く可憐なユキノシタの花が咲く。宗谷川の清冽な渓流を眺めながら深呼吸すると、ひんやりとして湿り気のある空気が胸いっぱいに広がった。

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 宗谷川は丹生(にゆう)川と合流し、その北方に開かれたのが中山道六十一番目の宿場「醒井宿」。江戸時代には『木曽路名所図会』に「町中に流れ有(あり)て至って清し。寒暑にも増減なし」と賞された湧水の里である。

 周辺に残る史跡の一つが、役行者(えんのぎょうじゃ)開山と伝わる普門山松尾寺。住職で寺直営の溪流魚料理店「醒井楼」の板前も務める近藤澄人さんは、「料理を楽しんでいただきながら、自然の恵みや当地の歴史にも思いを寄せてほしい」と話す。

 静かで心地よい川音が、いつまでも耳に残った。

蛭子 真=写真

◉名勝指定 昭和16年(1941)12月13日
電話:0749-58-2227[米原観光協会]
電話:0749-54-0120[醒井楼]
滋賀県米原市上丹生

峡谷の近くには、明治11年(1878)設立の日本最古の滋賀県醒井養鱒〈ようそん〉場があり、琵琶湖固有種のビワマスや、マス類の養鱒事業を行っている。また、東海道本線醒ケ井駅周辺には、「居醒〈いさめ〉の清水」をはじめ、湧水や国登録有形文化財の建造物や史跡がある。

出典:「ひととき」2018年6月号
※この記事の内容は雑誌発売時のもので、現在とは異なる場合があります。詳細はお出かけの際、現地にお確かめください。


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