うず潮の街でつむがれる半生記(鳴門・鳴門線)|終着駅に行ってきました#8
かつては日本を代表する塩の生産地として隆盛を極めた、鳴門。その街にある小さな終着駅には、今も昔も人々を乗せた列車が発着しています。多くのお遍路さんたちも歩いたという、撫養(むや)街道。その一隅にたたずむ小料理屋で、夜は、温かくしっぽりと更けていきます。(連載:終着駅に行ってきました)
文=服部夏生 写真=三原久明
「終着駅は始発駅って言いますものね」
居酒屋のカウンターの内側で、ぼくたちがこの街に来た理由を聞いた女将は、しみじみと言ってうなずいた。北島三郎が歌った名曲の