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「ひととき」の特集紹介

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旅の月刊誌「ひととき」の特集の一部をお読みいただけます。
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2023年2月の記事一覧

長崎 中華菓子をたずねて|異国菓子ものがたり

真心込めて作る〝元祖よりより〟 萬順製菓  1571年に長崎が開港すると、ポルトガル船が長崎へやってきた。しかし江戸幕府は次第にキリスト教に対する取り締まりを強め、貿易と同時に布教を行っていたポルトガル人はやがて追放されることになる。1641年、無人になった出島には平戸からオランダ商館が移され、このとき幕末まで続く鎖国体制が完成した。  その少し前から、中国からの船・唐船の入港もまた、長崎港に限定された。キリスト教徒ではない中国人は当初、町中に住むことができたので、江戸時

お菓子の島、平戸へ|長崎 異国菓子ものがたり

 平戸は「お菓子の島」だ。はるかな歴史に育まれた、甘い記憶にたゆたう島。  それは砂糖の記憶である。平戸の菓子はとろけてしまいそうなほど、甘い。なぜならその甘さこそが、経済力と文化、そして先進性の証だったから。かつて砂糖は遠い外国から運ばれてくる、高価で貴重なものだった。400年以上もの昔にその砂糖を受け入れる玄関口になったのが、平戸だ。  遣隋使・遣唐使のころから海外との重要な交通拠点だった平戸に、初めてポルトガル船が入港したのは1550年のこと。南蛮貿易の始まりである