マガジンのカバー画像

地元にエール これ、いいね!

76
日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験で…
運営しているクリエイター

#ほんのひととき

【若狭のお箸】若狭の美しさを表現した現代の箸づくり(福井県小浜市)

「御食国」として都に豊かな食材を運んできた福井県小浜市は現在、箸の一大生産地として栄える町。全国に流通する塗箸の8割がここで生まれているという。その背景に、400年以上の歴史をもつ伝統工芸品・若狭塗があることは間違いない。かつて漁師が副業として若狭塗の箸づくりをしていたことが、箸産業のルーツのひとつだ。 「若狭塗の模様は、卵殻と貝殻、松葉や菜種などの自然素材で描いていきます。色漆を塗り、金箔を置き、さらに漆を塗り重ねます。その後、研ぎ出しによってきらめく模様を出すのが若狭塗

【伊勢根付】神宮の加護を願った土産物(三重県伊勢市)

 無事にカエレますように──。  江戸時代、お伊勢参りの土産として人気だった根付。年間に何十万人もの庶民が全国から伊勢神宮を目指して旅をするようになったその頃でも、道中は険しく、追い剥ぎなど危険もあった。だから職人たちは旅の安全を祈って根付にカエルを彫ったのだという。七福神や十二支などの縁起ものも。  根付とは、煙草入れなどの小物と紐で結び、帯に挟んで携帯するための留め具。この目立たない実用品に、限りない楽しみが広がる。  身につけるものだから小さく、そして帯や手を傷つ

【飯田の水引】思いをつなぎ、心を結ぶ日本独自の文化(長野県飯田市)

 ハレの日を華やかに、豪華に彩る水引。飯田は江戸時代から、水引の一大産地として知られる。  気候は温暖で楮や三椏*が豊富にとれ、また天竜川の清流など名水に恵まれていたことから古くより美しく丈夫な和紙がつくられていた。その和紙を使い研究を重ねて生み出された、高品質の真っ白な元結は、江戸のみならず全国を席巻し、さらにさまざまに染め分け水引がつくられるようになった。  そう、水引は紙でできている。紙を縒って長く長く延ばした一本の〝こより〟。それを色とりどりに幾重にも結んで形をつ

【竹田の姫だるま】しあわせの微笑みを未来につなぐ縁起物(大分県竹田市)

 たおやかに微笑む「竹田の姫だるま」。竹田市で約400年前に生まれた女性のだるまは、家庭円満・商売繁盛の縁起物として親しまれ、旧岡藩時代には下級武士の内職として作られていたが、戦時中に途絶えた。このだるまを戦後に復興したのが、ごとう姫だるま工房。2代目の後藤明子さんは「初代・後藤恒人が、皿に描かれた姫だるまを見て、『この地の文化を復活させたい』とわずかに残るだるまや資料を頼りに作り始めたのが、今の姫だるまです」と話す。19歳で後藤家に嫁ぎ、義父である初代から製法を習って半世紀

【高松盆栽】松盆栽の生産量が日本一!産地から国内外にその魅力を発信(香川県高松市)

 高松盆栽の歴史は遡ること200年余り。野山に自生していた松を鉢に植え替え、金刀比羅宮の参拝客を相手に、土産物として販売したのが始まりだという。「雨が少なく温暖な瀬戸内の気候と、水はけがいい花崗岩の土壌が、松の栽培に適していたんです」。香川県盆栽生産振興協議会の会長を務める尾路悟さんが教えてくれた。  高松盆栽は、盆栽の代表格・黒松を筆頭に、主に松を扱う。高松市の鬼無町と国分寺町が生産地の中心で、最盛期の農家は300軒を超えていた。現在は60軒ほどに減少したものの、国内で生

【出雲の鍛冶しごと】「たたら」の伝統を今に伝える(島根県安来市)

 粘土で築いた炉に、砂鉄と木炭を交互にくべ、鞴で風を送り、高温で燃焼させる。炉の中で砂鉄は分解・還元され、鉄が生まれる。日本古来の「たたら製鉄」だ。  良質な砂鉄に恵まれた出雲地方では、1000年以上前から鉄づくりが行われてきた。その長い歴史は、たたら関連の貴重な資料や器具を展示する安来市の「和鋼博物館」で体感することができる。  産業としてのたたら製鉄は近代製鉄法に取って換わられ、100年ほど前に姿を消したが、今でも出雲伝統の鉄加工を継承する職人たちがいる。今回紹介する

【姫路の白革小物】1000年の伝統を誇る工芸品、白い革に豊かな色彩(兵庫県姫路市)

 軽くてしなやか、そして明るい。こんなポップな革製品が手元にあれば、いつでも晴れ晴れとした気分でいられそうだ。  姫路でなめされた白い革を使う製品「姫革細工」を手がけるキャッスルレザーの社長・水田久司さんは、 「伝統を守りつつ、さらに新しさも追求しています」 と話す。コロナ禍で売り上げが落ちた際には、あえて新しい柄を発表するなど、意欲的な挑戦を続けている。  型押しで模様をつけ、彩色をし、表面保護の加工をする。これが古くからつくられてきた革細工の手順だ。姫革細工は兵庫