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イスタンブル便り

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25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わ… もっと読む
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#モスク

ボスフォラス海峡とナイル河: オスマン帝国的カイロ案内|イスタンブル便り

ナイル河のほとりで、この原稿を書いている。 日本のさる研究機関の研究プロジェクトによる調査出張である。数えてみれば、10年ぶりのカイロだ。初めて訪れたのは、20年以上前の学生の頃、一人だった。それから何度か訪れている。 カイロは大好きな街だ。「ああ、ここからアフリカが始まるのか」というのが、第一印象だった。その印象は、今も変わらない。空港に降り立った途端、細かいことにこだわらないおおらかさを感じる。建物のスケールも、トルコとは違って大きい(19世紀にイタリア人建築家が多く

【東京ジャーミイ】東京のなかのイスタンブル(前編)|イスタンブル便り

年明けから約1ヶ月の予定で、東京にいる。 母校の早稲田大学より招かれて、三回のセミナーを行うのが主な目的だ。研究室も宿舎も提供されて、学生時代を過ごした早稲田界隈で生活する。タイムマシンに乗って舞い戻ってきたような、不思議な感じである。 そこで今回は、東京のなかのイスタンブル、と洒落込んで、イスタンブルからきたわたしが見た東京を、描いてみたいと思う。行き先は代々木上原、東京ジャーミイである。 東京ジャーミイは前になんどか訪れたことがある。 それで、特に事前チェックをしていな

博物館からモスクになった「アヤソフィア」の今|イスタンブル便り

この連載「イスタンブル便り」では、25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わりのなかで実際に経験した、心温まる話、はっとする話、ほろりとする話など。今回は、2020年7月に博物館からモスクになったビザンチン時代の大聖堂「アヤソフィア」の今をレポートします。  アヤソフィアのドームの内側頂点には、「アルトゥン・トプ(金の玉)」と呼ばれる半球体