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イスタンブル便り

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25年以上トルコを生活・仕事の拠点としてきたジラルデッリ青木美由紀さんが、専門の美術史を通して、あるいはそれを離れたふとした日常から観察したトルコの魅力を切り取ります。人との関わ… もっと読む
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#東京

関東大震災100年と伊東忠太|イスタンブル便り

国境の町で、 一泊を余儀なくされた。イタリアの山の上の村からイスタンブルへ帰る自動車旅行の途上である。南伊の港からギリシャへフェリーで渡り、イグナツィア街道をひた走り、トルコへの国境を越えてしばらく行ったところで、車が突然故障したのだ。 翌朝。宿泊客のまばらな朝食室のテレビが、破壊された建物の映像を映し出した。まだ目覚めていなかった体の細胞が、一気に覚醒した。 トルコ南東部、シリア北西部を未曾有の大地震が襲ったのは、今年2月のことである。現時点で、死者数は5万余と言われて

東京のなかのイスタンブル(後編)ユヌス・エムレ インスティテュート東京と、トルコ語初学のころ|イスタンブル便り

ユヌス・エムレと聞いて、何のことかすぐにわかる人は、稀だろう。 トルコは最初からそういうハンデを負っている。 では、ゲーテなら? このエッセイをお読みの本好きの方なら、ご存知のはずだ。ならば、ゲーテ・インスティトゥートといえば何のことか、だいたい予想はおつきでしょう。19世紀ドイツの詩人・文学者、ヨハン・ウォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)の名を冠した、ドイツの文化センターのことだ。ドイツ連邦政府の機関で、世界各国に設置され、ドイツ語の普及やドイツ文化全般