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飛騨さんぽ

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紆余曲折を経て雪国・飛騨に移り住んだ浅岡里優さんが、日々の暮らしの中で感じた飛騨の魅力を飾らない言葉で綴っていきます。
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記事一覧

【飛騨の匠】1300年の伝統を受け継ぐ木工の技と心|飛騨さんぽ

飛騨の街歩きは、楽しい。最近は、いろいろな建造物に目を凝らすのにハマっている。 趣を感じる街並み、見た目から伝わる美しさに心が踊るのはもちろんだが、その歴史に想いを馳せると日本文化の持つ奥行きを感じることができる。 飛騨は昔から「匠の里」として知られてきた。現地で暮らしていると、「飛騨の匠」という言葉をよく耳にする。飛騨出身の夫の話では、小学校の頃から社会科の時間に「飛騨は、匠のまち」と習うらしい。歴史を学ぶだけでなく、実際の大工の方を招いた木工授業なども行われているとい

カオスな神岡!東洋一の鉱山が造り出した街|飛騨さんぽ

これまで飛騨の大自然や伝統ある文化を紹介してきたが、飛騨市にはまたひと味違った魅力のあふれる街がある。それが「神岡町」だ。 東洋一の鉱山とも謳われた神岡鉱山を有するエリアで、明治から昭和にかけて繁栄した街の様子がいまも色濃く残っている。 今回は、歴史の風情と時代の最先端が入り交じるカオスな街・神岡の魅力をご紹介したい。 鉱山とともに繁栄してきた町飛騨はもともと、山国で米があまり獲れなかったため、平安時代には「下下の国」と言われるほど貧しい地域とされていた。なかでも神岡町

この夏、飛騨の大自然をまるごと味わう|飛騨さんぽ

「飛騨の暮らしは、忙しい」 大自然を遊び尽くしている友人が語っていた印象的な言葉だ。 春は山菜採り、夏は川遊びや釣り、秋には栗拾いや紅葉狩り、冬になればウィンタースポーツ。飛騨は四季を感じながら、その時々ならではの楽しみを届けてくれる。 今回は飛騨を味わい尽くしている友人たちの手を借りて、夏の飛騨を満喫してきた。朝から飛騨の美味しい野菜を調達し、昼から清流で魚釣り、夕方から山々に囲まれてBBQとキャンプ。 今日は、その体験を通じて飛騨の魅力をご紹介したい。 飛騨の

日々の暮らしに薬草を|飛騨さんぽ

「この季節がいちばん好き」 そう語る地元の人も多いのがこの新緑の5月。 私が初めて飛騨に訪れたのも5月だった。たまたま仕事関係で飛騨の方とお話する機会があり、冬景色もいいけどGW明けの新緑の季節がとっても美しいからそのタイミングがおすすめと言われたのがキッカケ。 5月が近づくと、長く厳しい冬が明けるのを今か今かと待っていたかのように飛騨の樹々や植物たちが一斉に芽吹き始める。山々が美しい緑に衣替えし、見ているだけで心が満たされる。 そしてこの生命の芽吹きは、森の恵みの楽

GWに訪れたい!大自然や太古の歴史に触れるスポット3選|飛騨さんぽ

今年の冬はかなり厳しく、「これでもか!」とばかりに分厚い雪に覆われていた街も、4月に入るとあっという間に雪解けが進みすっかり春めいてきた。とはいえ、朝晩はまだ0℃まで下がるような日も多い。(飛騨では6月くらいまでストーブを片付けられない。これは移住して驚いたことのひとつ) みなさんが暮らしている地域はいま、どんな春を迎えているだろう。 さて、今回はGW間近ということで、この時期におすすめの飛騨のスポットをご紹介したい。 1.池ケ原湿原~ 40万株のミズバショウが咲き誇る

春の訪れを告げる音。230年の伝統を灯す和ろうそく|飛騨さんぽ

「飛騨さんぽ」は、紆余曲折を経て雪国・飛騨に移り住んだ浅岡里優さんが、日々の暮らしの中で感じた飛騨の魅力を飾らない言葉で綴る連載です。第4回は、飛騨古川の地で230年の伝統を受け継ぐ「和ろうそく」について。  春の訪れを感じる音がある。  しゃかっ、しゃかっ、とん、ととん。  和ろうそくづくりの音だ。 ※この動画は作業の様子を再現していただいたものです。音声をONにしてご覧ください。  飛騨古川には江戸時代から約230年続く“三嶋屋和ろうそく店”がある。その趣きある

800年の伝統を守る“山中和紙”の奥深い魅力|飛騨さんぽ

「飛騨さんぽ」は、紆余曲折を経て雪国・飛騨に移り住んだ浅岡里優さんが、日々の暮らしの中で感じた飛騨の魅力を飾らない言葉で綴る連載です。第3回は、飛騨の山奥で受け継がれてきた“山中和紙”について。 「800年続くこの伝統を、800年先まで残したい」  こう語るのは、雪深い河合町で、“山中和紙”の伝統を受け継ぐ長尾農園の長尾隆司さん。  飛騨には歴史的な文化や営みが数多く残っている。そのひとつが、伝統工芸の「山中和紙」だ。幼稚園や小学校の卒業証書や成人式の証書に使われるなど

ご挨拶に、日本酒。|飛騨さんぽ

「飛騨さんぽ」は、紆余曲折を経て雪国・飛騨に移り住んだ浅岡里優さんが、日々の暮らしの中で感じた飛騨の魅力を飾らない言葉で綴る連載です。第2回は、飛騨古川の人々がこよなく愛する地酒について。  冬になると、みなさんは何が恋しくなるだろう。こたつ、みかん、はたまた人肌なんて人もいるかも知れない。  私はというと、冬には日本酒が恋しくなる。 「九州生まれです」と言うと、よく焼酎好きと思われるのだが、私は日本酒派。佐賀の母の実家から歩いて行けるところに酒蔵がいくつかあって、幼い

優しさのおすそ分け|飛騨さんぽ

「飛騨さんぽ」は、紆余曲折を経て雪国・飛騨に移り住んだ浅岡里優さんが、日々の暮らしの中で感じた飛騨の魅力を飾らない言葉で綴る連載です。第1回は、飛騨古川に暮らす人々の優しさについて。  私が暮らす飛騨古川は、戦国時代の武将・金森可重が築いた城下町である。 雪化粧した飛騨古川の白壁土蔵の街並み  飛騨といえば高山が有名だが、飛騨古川も高山に負けず、歴史情緒あふれる街並みが残っている。  一般的に、こういう歴史的に魅力ある場所は観光的な要素が多くなりがち。賑わいがあってい