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新MiUra風土記

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この連載では、40年以上、世界各地と日本で20世紀の歴史的事件の場所を歩いてきた写真家の中川道夫さんが、日本近代化の玄関口・三浦半島をめぐります。
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#日本史がすき

盗人狩とキリシタン灯篭の湊|新MiUra風土記

地名に惹かれ訪ねた旅がある。その町も土地のことも知らない『地球の歩き方』やインターネットも無い時代だ。 欧州ならウルビーノ、シラクサ、ロードス。中東はアカバ、ジェリコ、ヤッフォ、アレッポ、ディヤルバクル、アレクサンドリア。アジアは大理、カシュガル、基隆、ホイアン、クチン。北米はケチカン、キャンベルリバー、ポートランドか。そこは日本人には馴染みのない場所だったかもしれない。 ここ三浦にも地図で見つけたそんな地名がある。それが盗人狩だった。黒澤明の映画『隠し砦の三悪人』や五社

いざ鎌倉!消えた白山道をたどる|新MiUra風土記

 金沢八景駅の風通しがよくなってきた。  駅前は拡幅されて、京急本線と逗子線の駅は新交通システムの金沢シーサイドラインの駅舎と立体的に結ばれて、より利便になったものだ。  周辺の再開発も進み、復元工事がつづいた駅裏にある江戸期の茅葺屋根の旧木村家住宅と金沢八景権現山公園も完成して、この四月に公開されたばかり。この山上には平潟湾からの浜風も届いていた。  横浜市最南端の金沢区はかつて六浦荘と呼ばれた。  干拓された今の地形は、かつて内海、湾と入江と川に侵食された海岸線で