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新MiUra風土記

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この連載では、40年以上、世界各地と日本で20世紀の歴史的事件の場所を歩いてきた写真家の中川道夫さんが、日本近代化の玄関口・三浦半島をめぐります。
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#鎌倉

北鎌倉の台峯で大蛇桜(オロチザクラ)をさがす|新MiUra風土記

大船駅の観音様を眺めながら、横須賀線は左へカーブを切ると空は明るくなり、低い山並が右手にみえる。次は北鎌倉駅で昔のままのような素朴なホームと駅舎。沿線には鎌倉五山(*1)のうちの三名刹があり、駅前は古都の風情をまだ残している。 ときにはその一つの円覚寺の仏殿に詣でて、境内の映画監督小津安ニ郎(1903-1963)の墓前に参る。墓石にはただ「無」の一文字が彼のすべてを語るかのようで、自分ならどう記すかと問われているようだ。   小津安ニ郎と北鎌倉といえば、映画『晩春』『麦秋』

いざ鎌倉! 亀の遊歩の大町、材木座|新MiUra風土記

ほんとうは行ってほしくないけど知ってほしい場所がある。とっておきの自分だけのお気に入りの処。 見どころいっぱいの鎌倉は三浦半島の人気地で、曜日にかかわらず鎌倉駅頭には人が多く小町通りは鎌倉一の繁華街になっている。 ただ2年目に入ったこの風土記で鎌倉を歩いたのは一度だけ、やはりオーバーツーリズムが気になる。(*1) 江戸時代も物見遊山の地で知られた鎌倉。(*2)そして中世鎌倉でいちばんにぎわう場所は何処だったのか? 小町があるなら大町もあるはずだ。小町通りのその古名は瀬

いざ鎌倉!消えた白山道をたどる|新MiUra風土記

 金沢八景駅の風通しがよくなってきた。  駅前は拡幅されて、京急本線と逗子線の駅は新交通システムの金沢シーサイドラインの駅舎と立体的に結ばれて、より利便になったものだ。  周辺の再開発も進み、復元工事がつづいた駅裏にある江戸期の茅葺屋根の旧木村家住宅と金沢八景権現山公園も完成して、この四月に公開されたばかり。この山上には平潟湾からの浜風も届いていた。  横浜市最南端の金沢区はかつて六浦荘と呼ばれた。  干拓された今の地形は、かつて内海、湾と入江と川に侵食された海岸線で

いざ紅葉!古都鎌倉|新MiUra風土記

この連載「新MiUra風土記」では、40年以上、世界各地と日本で20世紀の歴史的事件の場所を歩いてきた写真家の中川道夫さんが、日本近代化の玄関口・三浦半島をめぐります。第2回は、2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台でもある古都鎌倉を歩きます。 わかりにくい鎌倉史「なぜこんなに人がいるのだろう!? 週末でもないのに」。  鎌倉駅におりると、いつもそう呟いてしまう。鎌倉は四季を通して行楽客が絶えないが、古都の見どころの多彩さは奈良や京都には比べようもない。そこに次の