“すまい” 住居に聖空間を回復しよう|中西進『日本人の忘れもの』
万葉集研究の第一人者である中西進さんが執筆し、2001年の刊行以来いまも売れつづけているロングセラー『日本人の忘れもの』がついに電子書籍化されました。ここでは、特別にその内容を抜粋してお届けいたします。
床の間がなくなった 十年ほど前、国立の研究所を作る委員会に参加した。ある日のテーマは建物の設計についてだった。席上、私はこう依頼した。
「研究の場ですから、のっぺらぼうの建物にしないで下さい。日本語で『すみ』(隅)とか『くま』(隈)とかいう、そういう場所をもった曲りくねっ