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旅に効く、台湾ごよみ

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台湾にも南国ならではの季節の移ろいがあります。この連載「旅に効く、台湾ごよみ」では、季節の暦(二十四節気)に準じて、暮らしにとけこんだ行事や風習、日台での違いなどを、現地在住の作…
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2022年5月の記事一覧

台湾の人々に慕われる八田與一を偲ぶ|立夏~小満|旅に効く、台湾ごよみ(20)

濡れた街で楽しむ優雅な薫り5月になると台湾は、日本よりひとあし先に梅雨にはいる。台湾の梅雨は薫りの季節だ。 夜も更けるころ、雨音といっしょに、開け放したベランダから夜香木の甘やかな匂いが忍び込んでくる。陽が沈むと、星型の小さな花がひらいてジャスミンに似た芳香を放つ夜香木は、“ナイトジャスミン”とも呼ばれる。 街でもよく玉蘭(マグノリア)や、李香蘭の歌で知られる夜来香(グエライヒョン/イエライシャン)の「花売り」を見かけるようになる。「台湾語」(ホーロー語)では売花と言って

心弾む“街のメロディー”|啓蟄~春分|旅に効く、台湾ごよみ(18)

台湾の“土地”を守る神様 旧正月の行事もあらかた終わり、旧暦2月2日(今年は3月4日)は「土地公生」といって台湾で最もたくさん祀られている神様「土地公(福徳正神)」の誕生日で、今年一年のお祭りはじめでもある。土地公は、漢民族の古代神話の君主である「堯」の帝のころに農業を司る官吏であったといわれ、人々に農耕牧畜をもたらした。  台湾では街を歩いても山に登っても、あちらこちらに土地公の祠や廟を見ることができる。媽祖様が台湾を取りかこむ海を護る神様とすれば、土地公は道や田畑の畔、