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反射の見方

反射とは

感覚受容器から求心性神経にによって伝えられた刺激が、意志とは無関係に脊髄などの中枢で切り替えられ、遠心性神経に伝達され、こう書きに反応を起こす現象。
反射の種類
反射受容器の存在する場所により4種類に分けられる。
表在反射→皮膚、粘膜
深部反射→筋紡錘、腱紡錘
病的反射→異常反射
臓器反射→内蔵

反射異常の意義

①健常者でも腱反射が亢進、欠如することがあるので左右差の有無が大切
②著明な更新があっても、左右差、病的反射がなければ神経症、精神緊張に原因するかもいしれない。両側に病的反射がある場合は、両側の錐体路障害であり、脳幹、脊髄の障害を示唆する
③左右差があれば病的意義を有する可能性が高い。さらに、亢進側に間代や病的反射、感覚異常があれば診断価値は高い。

間代(クローヌス)のみかた

 間代とは深部腱反射の亢進を意味しており、膝クローヌスと足クローヌスがある。
1.膝クローヌス
 下肢を進展させ下肢を進展させ、膝蓋骨を下方に強く押し下げ、そのまま力を加え続ける。膝蓋骨が上下に連続的に動けば陽性。
2.足クローヌス
 背臥位で足を屈曲させ足を急激に背屈させる。そのまま力を入れ続け下腿三頭筋の痙攣が起こり足が上下に連続的に動けば陽性。
※間代の程度が弱く数回で終わる場合は偽性間代という。

表在反射

 皮膚および粘膜を針、綿などで刺激するとある特定の筋肉の収縮が起こる反射。この反射は多シナプス反射で、潜伏期が長く、疲労しやすい。何回も繰り返すと反射が出にくくなる。皮膚の表在反射の消失は錐体路障害の重要な徴候である。
1.粘膜反射
a.角膜反射
 脱脂綿で角膜を刺激すると目が閉じる。この反射の消失は、三叉神経求進路の障害を意味する。
b.くしゃみ反射
 鼻粘膜を刺激すると、くしゃみが起こる。この反射も三叉神経
c.咽頭反射または嘔吐反射
 咽頭後壁の粘膜を舌圧子などで刺激するとくしゃみが起こる。この反射の消失は迷走神経の障害を意味し、球麻痺やヒステリー患者で消失する。

2.皮膚反射
a.腹壁反射(肋間神経)
正常では腹壁筋の収縮により、刺激側へ迅速に動ごく。反射を誘発するには、強く、長く、速く行う。反射を容易に発現させるためには、吸気の終わりに行うと良い。
 肥満者や経産婦などの腹壁が弛緩した人、あるいは老人では反射が両側で消失していることが多い。このようなときは、腹筋を収縮させるか座位にして内臓を下垂させ腹壁を緊張させる。
 反射が一側で消失または減弱しているときに錐体路障害を疑う。
b.挙睾筋反射(L1.2、陰部大腿神経)
 大腿内側をピンなどで軽く擦ると、同側の挙睾筋の収縮により睾丸が挙上する。これは錐体路障害があると消失する。
c.臀部反射(L4~S3、下臀筋神経)
 一側の臀部をピンで擦ると臀部の収縮を見る。
d.足底反射(L5~S2、脛骨神経)
 足の裏を踵から前方へ擦ると、正常では母趾の屈曲が起こる。この反射が一側で欠如する場合は錐体路障害を疑う。
e.肛門反射(S3~5、陰部神経)
 肛門周囲や会陰部を擦ったり、直腸内に指を挿入すると、肛門括約筋が反射的に収縮する。
 会陰部の感覚消失、脊髄円錐部馬尾神経障害時にこの反射は消失または減弱する。

病的反射

 病的反射は正常では見られない反射である。上位運動ニューロンの障害によっておこり、原始的防衛反応と考えられている。この反射は、下位運動ニューロンが上位中枢の支配下r解放された時に起こる。
1.吸啜反射
 口を軽く開かせ、上唇から口角にかけて軽く擦ると口をとがらせる。小児では出現するが成人で出現すれば病的である。前頭葉の障害、両側大脳の広範な障害を考える。
2.口尖らし反射
 上唇の中央を叩く。これにより、口輪筋が収縮し唇が尖る場合陽性となる。陽性の場合は両側の錐体路障害を意味する。
3.クヴォステック徴候
 テタニー患者で、末梢神経が機械的刺激に対して過敏になっていることを見る。
顔面神経幹を外耳孔前方で叩打し、鼻翼、眼瞼、口角などの痙縮をみる。(Chvostek sign Ⅰ)頬骨弓と口角を結ぶ中間点を叩打して同様の筋収縮を見る。(Chvostek sign Ⅱ)本徴候は低Ca欠症をきたす疾患で陽性となる。
4.手指屈筋反射
a.Hoffmann reflex
 手指を背屈にして検者は患者の中指を2指と3指ではさみ母指で中指の爪のところをはじく。刺激により母指の内転が起これば陽性。本徴候は錐体路障害によくみられ、一側のみに陽性であれば病的意義がある。
b.トレムナー反射
患者の中指を手掌側からはじき、母指が内転屈曲すれば陽性。一側のみ陽性の場合錐体路障害の可能性。
c.ワルデンベルグ反射
 肘を屈曲、前腕回外で手指を屈曲位にする。第4指先端手掌側に手を置きその上をハンマーで叩く。患者の手指が屈曲すれば陽性。一側のみ陽性の場合錐体路障害の可能性。
5.把握反射、強制把握反射、強制模索
 この反射は、前頭葉も障害を意味する。こする部位は母指と示指の間が最もよく、患者に見えないようにする。強制模索は広範な大脳障害で、意識障害や知能低下を認めることがある。
6.トルソー徴候
 血圧計のマンシェットを腕にまき、最大血圧よりやや低めに内圧を上昇させ、手に特有な痙攣が起こればこの徴候は陽性である。4分以上内圧を上げても出現しなければ陰性とするが、過換気をさせると出現しやすくなる。本徴候はテタニーの診断に有用。
7.おとがい反射
 手掌の母指球を擦ると同側のおとがい筋が収縮する。時には口輪筋や眼輪筋の一部が収縮することもある。通常、錐体路障害や前頭葉障害時に出現するが、正常でもみられることがあるので注意する。また、中枢性顔面神経麻痺では亢進し、末梢性顔面神経麻痺では消失する。
8.足底筋反射
 
この反射は深部反射の一種であり、正常では出現しにくい。錐体路障害など上位中枢からの抑制が取れると誘発される。
a.ロッソリモー反射(L5〜S2)
 足底面、あるいは足趾の付け根をハンマーで上方に向けて叩き、足趾の屈曲を見る。母趾よりも他の4指の付け根を叩いて出現する方が病的意義は高い。Area6の障害とされている。
b.メンデル・ベヒテレフ反射(L5〜S2)
 足背の外側をハンマーで叩き足底への屈曲を見る。ロッソリモーよりも出現しにくい。
9.バビンスキー反射
 もっとも信頼できる錐体路障害。求心路はL5/S、遠心路はL4/5。背臥位で下肢を伸展させる。足の裏の外側をゆっくり踵から上方に擦り、母趾の方へ曲げる。一回で止めずに何回も擦って見ると良い。最初はなるべく先端が尖っていないものを選択する。反射が出やすいときは、下肢や腹部への刺激でも出現することがある。このように敏感にでやすいには脊髄疾患である。大脳障害では、反射が出やすくても下腿や足への刺激でなければ出現しない。この刺激で、母指が背屈すれば陽性。
10.マイヤー反射、レリー反射
 このふたつの徴候は、正常で起こるべき反射が認められないときに陽性とする。錐体路障害の一徴候となることがある。
a.マイヤー反射
 正常では手の3,4,5指、特に4指を基関節で強く屈曲させると、母指は内転し伸展する。これをマイヤー反射という。これが欠如した場合、マイヤー反射陽性。
b.レリー徴候
 上肢を軽く屈曲、回外させておき、手を受動的に内側に屈曲させると、正常では上腕二頭筋が収縮して肘が屈曲する。これが消失したものをレリー徴候陽性という。
11.下肢屈曲反射の異常
 正常では抑制されているが、高位中枢からの抑制が取れると出現する反射がある。
 正常では、下肢の末梢を針で刺したりつねったりすると、股、膝関節は屈曲し、足趾は屈曲する。しかし、背屈は足底を刺激したときにしか出現しない。足底以外での刺激で背屈が出現した場合は錐体路障害を示し、これを病的短縮反射という。反応は遅く、即死の背屈を伴う。
・マリーフォー反射
 足趾全体を握って、これを強く足底に屈曲させると下肢全体の屈曲短縮が起こり、足も背屈する。錐体路障害のときに出現。

反射異常の解釈

①小児でも生後1年間は陽性。2年目の終わりまでしばしば陽性になる。
②錐体路障害があっても必ず陽性になるわけではない。
③陽性であっても一過性の場合がある。
④反射が陽性に出ても、下肢の機能は正常で何の症状も伴わないことがある。
⑤反射出現の程度と錐体路障害の程度は比例しない。
⑥末梢神経または筋のいずれかが障害されて伸筋のみが健全であれば、錐体路に障害がなくてもバビンスキー反射が陽性になる。

深部腱反射    

深部腱反射は骨格筋の腱を叩いて、筋に急激な伸長を与えた時に起こる反射。この反射は、筋紡錘が刺激されⅠa線維に伝えられ、脊髄において直接α運動ニューロンを刺激し筋の収縮を起こす反射で単シナプス反射である。方法は、検査したい腱をハンマーで直接または自身の手を介して叩打しその反応を見る。
以下に対象腱とその反射弓を示す。

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各種神経障害における反射異常

①錐体路障害
 A.バビンスキー反射の出現
 B.腱反射の亢進
 C.腹壁反射など表在反射の減弱~消失
②末梢神経障害
 A.全ての反射の減弱ないし消失
 B.病的反射なし
③ヒステリー性障害

参考文献

理学療法評価学改定第5版
ベッドサイドの神経のみかた

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