いいこと日記その2 母の美徳

私と母はおおむね仲はいいものの、お互い不完全なもの同士なので、「もうやっていけない」と思うこともときたまある。

しかし、最近、母とファッションの話をしていたときに、母の美徳を感じたのだった。

私は美意識が非常に低いため、頻繁に母に着ているもののダメ出しをされる。

その過程でふと、母がこんなことを言った。

「こんなダメ出ししてもええんかな」

「ええけど。言うこときかんこともあるで」

「そら当たり前やろ。言うこと全部聞かれたら気持ち悪いわ」


母はどうやら、「子どもは言うことを聞かないものだ」と思っているようだ。

それはそうだろう、と大方の人は思うかもしれないが、私は「後輩だからなんでも言うことを聞くべきだ」とか、「年下だからなんでも言うことを聞くべきだ」と思っている人に何人も会ってきた。

彼らの期待に応えなかったばかりに、悪口を言われたこともある。


思えば私は母の言うことに何度も逆らい、そのたびに小言を言われてきたが、「子どもだから」「未熟だから」言うことを聞くべきだと言われたことは一度もない。

そして小言を言っている場面で、「なんでも言うことを聞かれると逆に気持ち悪い」と言えるということはなかなかできないことだと思う。


口論をすることもあるし、趣味が合わないこともある。それでも彼女と一緒に生きていけるのは、この美徳のおかげかもしれない。