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「だれでも新規事業つくれるカレッジ(だれつく)」と「起業の教習所」構想

●起業の教習所構想

「これからの人生を賭けて、何かを成し遂げるとしたら、お前はいったい、何がしたいの?」

スタートアップの役員として、これまで何度も「あなたは何がしたいの?」と人に尋ねてきた私が、その問いを自分自身にぶつけたとき。
どうしても実現したい世界を言葉で表すと、「起業の教習所」というビジョンに行きつきました。
日本で起こっている数多くの課題を、起業の支援をすることによって、解決していけないかと考えたのです。

とかく、「ハイリスクだ」「事故だらけだ」と言われる起業です。
しかし、経営陣として、支援者として、株主として、さまざまな形で起業に取り組んできた私からすると、その認識は正しいとは思えません。

自動車だって、突然運転しろと言われたら危険な乗り物です。
けれども、教習所でトレーニングを積むことによって、ほとんど全ての人が免許を取り、公道を運転できるようになります。
起業も車の運転と同じです。ルールを知らない下手くそが運転するから事故るのです。教習所で免許を取るときのようにトレーニングをしながら事業を組み立てていけば、起業の勝率は大幅に上がります。

この「起業の教習所」の構想の詳細を語る前に、なぜ私が、このようなビジョンを持つに至ったかについて、少し話をさせてください。

●カネで解決できる問題と、カネで解決できない問題

いくつかのメディアでも書かせていただきましたが、いま、日本や世界で起こっている問題の多くは「貧しさ」が原因になっています。
特に日本は急速に貧しい国になっていて、年金や医療保険、終身雇用など「豊かだった頃に発行した空手形」を実行することができなくなり、苦しんでいます。「できっこない約束をしちゃったのに、まじめに守ろうとする」精神は、この日本という国に住む人々の良きところでもありますが、実際問題はできっこないわけで、インフレなどでごまかすしかなくなっています。

ただ、このような状況も、「昔も今も変わらず豊か」であれば、悩まずにすむことです。「カネばかりあっても仕方ない」は事実ですが、「カネがないと、どうにもならない」も、やはり事実です。

世の中の問題を「カネで解決できる問題」と、「カネで解決できない問題」に分けたとき、「カネで解決できる問題」を「カネで解決」すれば「カネで解決できない問題」の方に、自分のエネルギーを集中することができます。

例えば、「生きるために食べ物を得る」や「病気を治すために病院に行く」などは、「カネで解決できる問題」です。
一方、「親としてどうあるべきか」や「配偶者としてどうあるべきか」「友人としてどうあるべきか」といったことは、「自分が自分であること」によってしか解決できません。自分以外の誰かや機械に代わってもらうことはできないので、まさに「カネで解決できない問題」と言えます。
自分にしか解決できない問題に取り組むためには、「カネで解決できる問題」は「カネ」に解決してもらうことが有効です。

昔、大学の講義を受けたときに、経済学の片岡孝夫教授が「なぜ、自分の生きる道として経済学を選んだか」について話をされていました。
教授は、「源氏物語の時代から人の内面の問題は同じ内容である。しかし、経済の問題はずっと発展している」というようなことをおっしゃっていて、大変共感しました。

人の内面の問題も経済の問題も「等しく」深刻な問題ですが、「あの人に好かれたい」といった感情問題は「あの人」が一人しかいない以上、ゼロサムゲームでしかありません。一方、「お腹いっぱい食べたい」とか「健康でいたい」といった経済問題は、食料や医療が豊富であれば解決できます。

日本で起こっている問題のほとんどは「カネで解決できる問題」が豊かでなくなったために解決できなくなったことで発生しています。そんな日本で自分は何ができるかと考えました。
社会全体のお金の流れを大きく変えることは、残念ながら今の自分には荷が重い課題です。
しかし、一人ひとりの個人が「カネで解決できる問題を解決することできる豊かさを手に入れること」を支援することなら、できるかもしれないと考えました。社会全体が貧しくなっていたとしても、一人ひとりの個人が豊かになる方法はたくさんあります。

●「起業」は本当に危険なのか?

ここでやっと、「起業の教習所」の話に戻ります。
一人ひとりの個人が豊かになる方法の選択肢として、「起業」をもっと積極的に支援していきたいと考えているのです。

会社に雇用される働き方は、どうしても所属している組織に依存します。
収入という豊かさの源泉を、会社という単一の存在に依存していると、その組織が危険な状況になったときに、抜け出すことが極めて困難になります。組織全体が下降しているときに自分だけ上昇するというのはとても難しいのです。
もちろん、会社組織に雇用されることは、さまざまなメリットがあります。しかし、そもそもこの100年ほどでメジャーになった働き方なので、歴史が浅い分、バグも多くあります。中でも、この「一点集中リスク」は、雇用という働き方の一番大きなバグだと思います。

起業は、この収入を一ヶ所に依存している状態を、複数に分散する行為といえます。ポートフォリオを組むイメージです。この意味で、起業はとても安全な働き方といえます。
しかし、雇用されることに比べると難易度が高く、誰にでもできるわけではないと考えられているのが現状です。
たしかに、「デザインができる」とか、「営業ができる」といった、個別の能力だけで起業を成立させられるわけではありません。マーケティングや経理や税務、法務など幅広い知見がそろって初めて「カネになり、起業が成立」します。

この「起業は成立難易度が高い」という課題を「自動車免許を取るレベル」まで下げようというのが「起業の教習所」ビジョンです。
先に話したように、起業は決して「一部の選ばれし人」だけに許された働き方ではありません。
これまで、多数の起業に立ち会ってきましたが、きちんとしたトレーニングを受ければ、少なくとも大事故を起こす可能性は極めて低くなります。
大成功するかどうかは時の運もありますが、少なくとも、「食いっぱぐれない」ための技術を身につけてもらうことはできると確信をもつようになりました。

政府や民間の支援施策が起業を後押ししている一方で、大規模な成果を出している教習所的な存在は、私が知る限り例がありません。
本気ファクトリーは、この起業までのトレーニングを仕組み化・型化して、多くの人に提供していきたいと思っています。

このたび提供する「だれでも新規事業つくれるカレッジ(だれつく)」は企業の事業開発担当者がはじめの一歩を踏み出すためのものです。
企業内の新規事業開発も、起業同様、ハードルの高いものと考えられています。しかし、私から見ると、「間違ったやり方をしているのだから、事業が立ち上がらないのも当然」という状況が非常に多いと感じます。
この間違ったやり方を排除するだけでも、新規事業が立ち上がる可能性は格段に上がるでしょう。

事業開発の手法は起業でも、企業内事業でも本質的には変わるものではありませんが、企業の中で事業開発をしようとすると、独立起業では必要なかった手法がプラスで必要となります。

企業ごとに個別最適が必要な部分もありますが、「だれつく」では可能な限りこの部分までカバーすることに取り組んでいます。
すでにリリースしている個人向けの「イチから起業オンライン」と合わせて、企業内の事業開発が増やせたらと思っています。

●1億円のデットファイナンスについて

今回、本気ファクトリーが「起業の教習所」のビジョンを実現するために行った資金調達についても書きたいと思います。

私の持論として、「起業してすぐは、スタートアップをやるな」というものがあります。どうしてもやりたい事業があって、その事業がいますぐ始めないと時流に乗り遅れてしまうケースでもない限り、スタートアップにいきなり取り組むことはおすすめしません。

スタートアップには、いわゆる事業モデルやマーケットトレンドといった「スタートアップ固有の問題」に目が行きがちなのですが、実際に事業開発で直面するのは「組織マネジメント」や「マーケティング」「経理・財務」など経営一般に関わる問題のほうが圧倒的に多くなります。
いきなりスタートアップをやると、「スタートアップ固有の問題」と「経営一般の問題」の両方への対処を同時に学ばないといけません。これは正直に言って、相当きついと思います。
ですから、起業をしたらまずはスモールビジネスを始め、先に経営一般の問題について対処できる技術を身に着けるのがおすすめです。スタートアップをやるのは、それができてからが良いでしょう。

このような流れで事業を進めることの、もうひとつのメリットが資金調達です。本気ファクトリーは2014年に創業してから、スモールビジネスで毎期黒字経営を続けています。また、借入も創業初期から継続的に続けていて、すでに何本も「完済」しています。

今回、スタートアップを行うにあたり、借入の相談をしたのですが、各金融機関さんとも好意的に応じてくれて、1億円の資金調達に至りました。
正直なところ、本気ファクトリーの規模から見ると過大な借入だと思います。しかし、8年間の積み重ねがあればこそ、この資金調達が可能になったのではないかと考えています。

スタートアップの調達といえば、資本調達です。しかし、バリュエーションが低いシード・アーリーステージの間は、実効性のある資本業務提携以外は可能な限り資本調達を避けたいものだと思います。
上場企業の創業から上場までの中央値が大体15年くらい。それを考えると「急いで始めたところで上場に見合うくらい経営者が成長しないと上場に値する企業にはならない」と言えるでしょう。最初の3年ほどは経営者修行として、スモールビジネスに取り組んでも良いのではないかと思います。

もちろん、財務基盤が無い中で「急いでスタートアップをやりたい」という人はエンジェル投資やシードVCから調達するのは良いと思います。
スタートアップを始めて若干やりにくくなりましたが、畠山もエンジェル投資していますので我こそは!という方はご相談ください。

さて、こういうnoteの常として最後は告知なのですが、本気ファクトリーでは(第二)創業メンバーを募集しています。「起業の教習所構想」に共感いただける方はDMでもメッセンジャーでも結構ですので、お声がけください。

畠山Facebook :https://www.facebook.com/kazuya.hatakeyama


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