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ソリューション開発のための発想法

本気ファクトリー公式note編集部です。
 
企業の新規事業開発で重要なのは、質の高い顧客課題を発見し、その課題を解決する精度の高いソリューションを提供することです。
 
それでは、ソリューション開発のためのアイデアはどのように生み出されるのでしょうか。

ソリューションを考える際の発想法について、大企業の新規事業開発にコンサルタントとして携わってきた弊社代表の畠山に聞きました。

アイデアは素材の組み合わせで考える

ーー新規事業開発において、ソリューションを開発するためのアイデアはどのように生まれるのでしょうか。
畠山:「良いアイデアが思いつかない」「なんとなくの方向性はあるのに、アイデアに落とし込めない」など、アイデア出しに苦手意識を持つ方は多いのではないでしょうか。

アイデアは急に思いつくものではありません。まず、日頃からアイデアの素材になる情報を収集し、知識を深めることが重要です。また、最新のビジネス情報だけでなく、教養も身につける必要があります。

例えば、ICO(新規暗号資産公開)やNFT(非代替性トークン)の詐欺事件は、バブル経済の語源とも言われる18世紀イギリスで起きた「南海泡沫(ほうまつ)事件」とほぼ同じ構造だと考えられます。このように現在起こっているできごとも歴史や科学などに照らし合わせて理解することができるのです。

また、アイデアとは「特別な才能を持った人がゼロから作り出すもの」と考える方もいますが、それは大きな誤解です。ほぼすべてのアイデアは「既存のもの同士のかけ合わせ」から生まれます。つまり、発想が豊かな人とは、「素材となる知識」が豊富で、「素材を組み合わせる技術」に長けている人です。


アイデアは9つの視点で考える

畠山:アイデアを考えるための発想法はいろいろありますが、代表的な発想法として「オズボーンのチェックリスト」をご紹介します。

「オズボーンのチェックリスト」とは、9つの視点から、新たなアイデアを考える手法です。

【オズボーンのチェックリスト】

1. 転用 (Put to other uses)
2. 応用 (Adapt)
3. 変更 (Modify)
4. 拡大 (Magnify)
5. 縮小 (Minify)
6. 代用 (Substitute)
7. 置換 (Rearrange)
8. 逆転 (Reverse)
9. 結合 (Combine)


1. 転用 (Put to other uses)
「他に使い道はないか?」と考える視点です。既に存在しているものも、使い方を変えることで、新しい活用方法が見つかる場合があります。例えば、空き部屋をバケーションレンタルで貸し出すプラットフォームを生み出したAirbnbは、「転用」の代表的な成功事例と言えるでしょう。

2. 応用 (Adapt)
既存のものを「真似できないか?」と考える視点です。異業種の常識を取り入れるのは、新規事業開発でよく用いる手法です。駐車場のTIMESを運営するタイムズモビリティは、コンビニ業界の常識である24時間営業を駐車場運営に応用し、成功を収めました。その後、レンタカーサービスを自社の駐車場サービスと組み合わせたタイムズカーシェアでも業界をリードしています。

3. 変更 (Modify)
既存のものを「一部だけ変えたらどうか?」と考える方法です。色などの見た目、音、匂い、動き、意味、様式など、一部を変えることで、新しいものを生み出そうとする視点です。自動車の燃料をガソリンから電気に変えた電気自動車は、自動車業界に大きな変革をもたらしました。業界最大手のテスラは、2020年には時価総額でトヨタを抜き、自動車業界全体でトップに君臨しています。

4. 拡大 (Magnify)
既存のものを「大きくする」手法です。長さ、厚み、期間、価格などを単純に大きく(長く)するだけで、サービスが大きく変わる可能性があります。1つ買ったらもう1つもらえるプロモーションも、量を増やす(=大きくする)手法です。
セブンイレブンは、もともと朝7時から夜11時まで営業していました。営業時間を24時間にしたことで、消費者の利便性が高まり、24時間営業はコンビニ業界の常識になりました。

5. 縮小 (Minify)
拡大の反対で「小さくする」手法です。新商品を小型化・軽量化するのは王道の商品開発と言えるでしょう。ステレオオーディオ機器を小型化したウォークマン、もともと3㎏あったショルダーフォンを軽量化した携帯電話など、小型化は日本のお家芸と言われてきました。
また、食品業界では、家族団らんの象徴である鍋料理を、「ひとり鍋」として単身世帯向けに販売し、大ヒットさせました。かつて容量750mlの3〜4人分向けの使い切りタイプが主流だった鍋つゆ市場でも、ポーションタイプの鍋つゆや1人前サイズのボトルが発売され、市場規模を大きく伸ばしています。

6. 代用 (Substitute)
「変更」と近い手法で、別のものを使う方法です。ものづくりであれば、素材を変えることや別のもので表現することが「代用」にあたります。例えば、たんぽぽの根を使った「たんぽぽコーヒー」は、コーヒーの風味があるにも関わらず、カフェインが含まれていないため、妊婦さんの間で定番商品になりました。

7. 置換 (Rearrange)
置換も「変更」や「代用」に似た概念で、入れ替える手法です。例えば、向きやレイアウトを変える、使う順番を変える、などが考えられます。良い例が、スマートフォンのフリック入力です。キーボード配列の「置換」によって、スマホならではの入力方法を確立しました。

8. 逆転 (Reverse)
今あるものを逆にしたり、反対にして考える手法です。前後左右、長所と短所、順番、時間などを反対にすることで発想を広げます。掲載課金型で広告費を前払いするビジネスモデルを後払いに変更した報酬型求人広告も、その一例と言えるでしょう。

9. 結合 (Combine)
結合は結びつけることです。かつて携帯電話に時計機能がついたことは、腕時計業界を震撼させた出来事でした。その後、携帯電話にカメラ機能がついたことでデジタルカメラ市場のシェアを奪いました。デジタルカメラ市場は2010年に出荷台数が1億2,000万台を突破したのをピークに、約10年間で10分の1ほどまでに減少しています。また、最近ではスマートフォンでゲームをするユーザーも多く、ゲーム市場にも大きな影響を与えています。

思考をまとめるKJ法、思考パターンを変えるシックスハット法

ーーゼロからアイデアを生み出そうとするのではなく、既に存在しているものの「かけ合わせ」や「組み合わせ」だと考えると、アイデア出しのハードルが下がりますね。オズボーンのチェックリストの他にも、有効な発想法はありますか?
畠山:「KJ法」や「シックスハット法」もよく使われる発想法です。

KJ法は、文化人類学者の川喜田二郎氏が紹介した手法です。ブレインストーミングで得た情報を付箋やカードに記入し、同じ系統のカードをグループ化します。そしてグループの関係性を論理的に整理し、問題解決の道筋を明らかにしていきます。アイデアが可視化されること、アイデアをロジカルにまとめることができることが、KJ法のメリットです。

シックスハット法は、エドワード・デ・ボノ氏によって開発された手法です。参加メンバーがステップごとに6種類の色の帽子 (シックス・ハット) を被り、帽子の色ごとに視点や思考を切り替えてブレインストーミングします。
白色は客観的・中立的な視点、赤色は感情的・直感的な視点、黄色は積極的・希望的な視点、黒色は批判的・消極的な視点、緑色は革新的・創造的な視点、青色は分析的・俯瞰的な視点で考える方法で、強制的に思考パターンを変えることで、自らの思考のクセに囚われなくなります。また、違う意見を持つメンバーが同時に意見を言うと対立しますが、帽子の色ごとに同じ方向性を持って議論できるので、会議がスムーズに進行できるのも利点です。

くり返しになりますが、アイデアは発明するものではなく、既存のものの「かけ合わせ」や「組み合わせ」から生まれます。オズボーンのチェックリスト、KJ法、シックスハット法などの思考法を活用し、視点を変えて物事を見ることで、思考の幅を広げましょう。

思考法を試してもアイデアが浮かばない場合は、一生懸命考えるのではなく、素材となる知識を増やすことが重要です。今まで興味がなかった分野の情報を積極的に取りに行くことをおすすめします。


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