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「目の前の泣いている子供に話しかける、それが社会を変える」児童虐待問題に取り組むワケ/本気マガジンVol.2 堤園子さん

「本気の大人たちの声を、みんなに伝えたい」をコンセプトに、毎週お届けする本気マガジン。第2回目となる今回は、平塚市こども家庭課で児童虐待の対応をするソーシャルワーキングの傍、起業して虐待問題に取り組む堤園子さんをゲストにお迎えしました。大学卒業後は建築事務所、その後は劇団員と、現在の取り組みとは全く繋がりがないように思える仕事をしていた堤さん。なぜ児童虐待問題に取り組むことになったのか。お話を伺いました。

本記事は本気の大人チャンネルの動画「【女性社会起業】児童虐待を無くす。仕組みを変えなきゃ社会課題は解決できない。〜堤園子さん〜」を文字起こしし引用。

Q1・堤さんってどんな人?

インタビューア・養田(以下:養)−まずは自己紹介をお願いします!

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ゲスト・堤園子さん(以下:堤・敬称略)−平塚市こども家庭課で児童虐待の対応をしているソーシャルワーカーをやっています。虐待通告があった時に、一番最初に駆けつけるのが私の役割。人生のミッションとして虐待を無くしたい訳です。
虐待になる前にどうにかしたいと思い、NPO法人で子ども食堂や学習支援などの虐待予防の活動をやっています。
それでも出会えない人がいるので、今度起業して、テクノロジーと人の力を使って虐待を予防したいと思っています。無敵のおばちゃんです笑

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養−自分で言っちゃうくらいだから、本当無敵ですね笑 一日何人くらいの人と会ったりしますか?

堤−いや〜・・数えられない!計算したら大体年間で3000人くらい(会ってます)

養−1日8人くらい?ほぼ土日ないですよね笑

堤−土日をどう捉えるかだよね!(自分は)やりたいことやってるから良いんだけど、ゆっくり寝れるとか。のんびりした時間とかは久しく無い笑

Q2・熱意の源泉は何?

養−原動力っていうのは、児童虐待を無くしたいっていう想い何ですか?

堤−本当にやりたい自分のwillって何なんだろうって思った時に、「誰もが自分の人生を生きてても良い」と思える世界にしたいっていうのが一番なんだよね。私自身、虐待を受けてきた経験があるし、ちょっと変わった子供だった。学校社会に受け入れられることも難しかった。いじめにあったり。結婚したけど離婚したり。
自分が自分らしく生きたいという気持ちを持ち続けると、人と別れなければいけない経験がすごく多かったんです。でもそうした悲しかったり苦しかったりする中でも、助けてくれる人がいて。私は自分のやりたいことに向かっていける。これを繰り返しているうちに振れ幅が大きくなってる感じがします。
あと私の親族自体が結構パワフルで。(誰かが)困っているかもしれないと思った時に、困っていることを見て見ぬフリなんて出来ないだろ!っていう。あとは(家)にのんびりするっていう文化がなくて。なのでそういうミッションがあった気がするよね笑

Q3・なぜ児童虐待に取り組み始めたの?

養−大学生の頃はどんなことを??

堤−建築士を目指していました。人が出会う場所を創りたかった。(就職した時)最初府中市美術館の工事現場に行きましたね。だけど設計事務所が面白くなかったの。ランドスケープの設計は面白かったんだけど、住宅設計事務所(はあんまり)。地域とか社会とどう繋がるかの仕組みをやりたかったんですよ。建物の箱じゃなかったんだよね。

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そこで悩んで。人生間違えるんですけど笑 劇団員になるんです笑_
大学の時に先生に「君が作るものには物語がある」と言われて。物語があるから「舞台美術とかやったら良いんじゃない?」って言われたことをふと思い出したの。
よし、じゃあ劇団に行って、舞台美術をやりたいって言ってみよう!と笑
「スタッフとしてやりたいです」って言ったら、劇団員の新人を募集していると言われて。私はそれはやりたくないです!って。

養−プレイヤー側ではないと。

堤−なんだけど「舞台を作るなら舞台に立ってみたほうが良いんじゃない?」って言われて。完全に口車に乗せられた笑

養−ポジショントーク笑

堤−そしたら「新人の中から二人選びます」って言われて。選ばれた訳。そこから24歳で劇団員になって、34くらいまで10年間劇団員だった。

養−そんな長いんですね笑

堤−相当だよね笑 
私の人生の物語的には空白の10年間って感じなんだけど笑 ただ、人がいるってことで場所ができる、その人に会いに行きたいって思うから場所が出来るっていうのを(劇団から学んだ)。そこから、(今度は)私が誰かの居場所になるっていうミッションが生まれて。
人は人の中に居場所ができるから、「私にも役に立てることがあれば」って思い立った訳。思い立って求人雑誌見たら、思い立った二週間後に児童養護施設の求人情報が出て。

養−10年劇団員やってて、いきなり何も知らないまま入ろうってならないですよ笑

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堤−ならないんだ! 私はなるんだよ笑 
違うと思ったら、そこには居られないんだよね。いきなり児童擁護施設に行った時に「何の資格もないんですよね!?」って言われて笑 普通児童養護施設の募集に応募する人は、保育士、学校の先生、社会福祉士とか。資格を持っている人が来るわけよ。何にもないわけ笑
じゃあ分かりましたと。「その気持ちで明日から来ていいですよ」となりまして。

養−おお〜。

堤−でもそこから、虐待を受けた子供達に出会って。地域が子供達にとって安心・安全な場所でなければいけないっていうのもそこで教えてもらった。
そして、虐待で保護される前に何とかしようと思って、今の役所に来ました。役所は虐待を既に受けた人しか対応できないから、もっと地域でとか、その前に(対応しなきゃいけないという考えに至った)と。ようやく最初の「何でやってるのか」っていう話が出来た笑

Q4・虐待はどうすれば無くせる?

堤−全国の市町村と児童相談所を合わせると、年間30万件虐待が起きています。あと、虐待によって死亡したと思われる児童が年間350人いて、約1日に1人が虐待で命を無くしています。これは結構深刻だと。

対応出来ていない虐待もあって、純粋な件数は出ていないのが現状で、これも凄く課題だと思っています。

養−園子さんはどうやって解決していこうと思っているんですか?

堤−本当に難しいと思うんだけど、人が2人いたら力関係って絶対起こるでしょ。いじめとか虐待って動物が根源的に持っている気がする。環境によって引き起こされるものではあるではあるんだよね。社会全体を虐待が起こらない環境にしないといけないのかなと。
子供達を救うだけではダメ。その前には自分も虐待を受けてきたり助けを求めても誰も助けてくれなかった経験をしてきた大人達が沢山いる。この人達を救わずに、その先の子供達だけアプローチしてもどうしても難しい。大人達に「子育ての責任は全部お前達にある」と言っている社会全体をどうにかしないといけない。

養−「子育ては親の責任だろ」という風潮ってありますよね。

堤−子供が泣いているときに「お母さん、子供泣いてるよ」って言うよね。知ってるよ!っていう。みんなで子供のことを見ていくとか、お母さんも含めて家族を支えていくっていう風にしないといけない。「お母さんを支えましょう」っていう視点が、そもそもお母さんが子育てをするってい決めていて、矢面にお母さんを立たせている。周りは傍観者になっている。そうでは無くて、みんなが主体的に子供達に関わっていく社会にしないと(虐待をなくすのは)難しいよね。

Q5・どうやって人を巻き込むの?

養−園子さんのすごいなと思うのが、会うたびに新しい人を巻き込んでいる所です。どうやって巻き込んでるんですか?

堤−教えてもらったのは、自分が成し遂げたい未来があるけど、絶対一人では無理だということ。分かんないことばっかりだし、出来ないことばっかり。本当に人に頼むしかない。だからとにかくいろんな人に「これをやりたいと思っている、だから助けてほしい」ってとにかく言いまくります。
偉い人たちが講義やってたりするからそこで待ってて、出てきた時に「すいませんちょっと聞いてください!」「私こういう事やりたいんです!」って言うんです笑 10人声かけたらその内の1人とかが「この人にメール出して見たらどうですか」って繋いでくれたり。本当に、色んな人からの圧倒的なgiveによって支えられています。

Q6・社会課題を解決したい人はどうすればいい?

堤−「子供達のために何をしたら良いですか?」とか「大きな社会課題に対して何をしたらいい?」という質問をすごく良くされます。
もし良かったら私と話しましょう!!!!!
メールアドレスと24時間zoom受付中です笑

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でも、大きなことを成し遂げたいと思った時に本当に出来ることって、今日目の前の人に挨拶するとか、最近連絡とってない友達とかに「どうしてる?心配してるよ」って連絡してみるとかなんです。それだけでも社会は変わり始めるんですよね。
例えば目の前にいる子供が泣いていたり、困っているかもしれなかったり。そういう人に「大丈夫ですか」って声をかけると「大丈夫です」って言われちゃうかもしれないけど。「何かお手伝いすることはありますか?」と声をかけてみる。子供と話をしてみる。そういうちょっとした勇気をもし持ってくれたら、本当に嬉しいです。
そこまで出来なくても、凄い泣いている子供がいたらちょっと目を合わせてみて「困るよね。うんうん。」ってやってあげるだけでも違う。そういう本当に小さい一歩をどれだけ踏めるかが大事です。
社会課題を解決したい人は、どれだけ社会課題に向き合っている人達と共に居られるかが勝負だと思う。私でいうと子供達とか、お母さん達。そしてこのお母さん達に「どうしたらいいの?」って聞き続けてる。「どうしたら良いか教えてほしい」って言い続けているから今の私のミッションがある。自分で考えたことでも無いわけだよね。
全部お母さん達が「こんな風に困ってる」と教えてくれたから、私なら出来るかも、友達となら出来るかもと、大きなムーブメントにできました。
まず目の前にいる人のことを無視しない、現場に居合わせること。そうすると、必要な人に出会えます。その勇気を持つことですね。

あとはね、一回来ればいいよね!子ども食堂とか学習支援とか、ありとあらゆることをやっています。何が起こっているのかを体感してもらうことが重要だと思います。

養−是非、社会課題に関心がある人は、園子さんの子ども食堂に!

堤−もしくは私とzoomで喋りましょう笑

Q7・働くとは?

養−さいごに、働くって何ですか?

堤−あのね〜、、。別に、何かを生み出してなかったとしてもあなたの人生はあなたの価値があるんですね。あなたにしか積み上げられないものなので。
どんな形だったって、人に評価されなくたって、いいと思います。それが大前提で。
私が持っている力・繋がり・知識・経験。そういうものを社会のために役立てていけますようにというのが私の本当の願いなので。それを成すために日々チャレンジを繰り返すことが私にとっての働くです。
生きやすい世界にするために自分の命を費やすことが、働くかな。


取材者:養田峻介
執筆・デザイン:新井桃太

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